by 418編集部
最近、おくちのおはなし会でママさんたちとお話しする機会をたくさんいただいていますが、そこで思ったこと…。 「乳歯は抜けるから虫歯治療しなくても大丈夫なのでは?」と思っていらっしゃる方が多いということの衝撃でした! そこで今回は、こどもの虫歯治療の大切さについてお話ししようと思います。 乳歯だけでなく永久歯の虫歯についてや、虫歯の治療法などもご紹介しますので、ぜひ参考にされてくださいね。
お子さんの虫歯治療、どうされていますか?
みなさんはかかりつけ歯科医院で「定期検診」受けていますか? 定期的にむし歯の有無や歯並びのチェック、虫歯予防のケアを受けていれば、もしも虫歯が見つかったとしても「早期発見・早期治療」することができます。 「うちの子、歯医者さん嫌がって泣くから」とか「虫歯がありそうだけど痛がってないし」という理由で虫歯を放置していると、のちに取り返しのつかないことにつながることもあるのです。
乳歯の虫歯について
乳歯はいずれ永久歯に交換します。そこで「どうせ抜けるんだから虫歯治療しなくてもいいのでは?」という方もいます。 乳歯の虫歯は放っておいても大丈夫なのでしょうか…?
1.乳歯の虫歯も治療が必要です!
確かに乳歯はいずれ抜け、永久歯に生え変わります。 だからといって虫歯を放置してしまうと、だんだん進行し、深くなると神経が細菌で侵され壊死(えし)してしまいます。 壊死した神経は腐敗し、歯の根っこの先に膿を持ってしまうこともあります。 乳歯の根っこの下には永久歯が作られているため、膿の中に永久歯の頭の部分があることで永久歯が形成不全(歯質が弱く形成されてしまったり、歯の形が正常な形でない形状になる)を起こす可能性もあるのです。
2.永久歯の歯並びにも影響するかも…?
乳歯は永久歯に比べて神経までの厚みが薄く、虫歯が進行すると神経まで到達しやすいため、「乳歯の虫歯は進行が速い」といわれています。 虫歯が大きく治療で残すことが難しい場合は、抜歯しなければならないことも。 また根っこが残っていたとしても、歯の頭の形を失ってしまったまま放置しておけば、両隣の歯は隙間を埋めるために動いてしまう可能性もあるのです。 永久歯は生えようと準備する過程で、乳歯を道しるべにして歯茎のほうへ上昇します。もし乳歯が虫歯によって侵され、道しるべとなる根っこを失っていたりスペースが確保されていないと、永久歯が正常な位置でない場所に生えてくる可能性も生じてしまいます。
3.乳歯は抜け変わるからと侮ってはいけません!
乳歯は6歳頃から下の前歯から順にだんだんと永久歯に交換し始めます。 生涯を通してみれば、ほんのわずかな年数しか使わない歯ではありますが、これから生えてくる永久歯を健康で正常な位置に萌出させるためにとても重要な役割がある歯なのです。 乳歯といえど侮る事なく、乳歯をしっかり守り永久歯につなげていくためにも、虫歯は早期発見・早期治療が大切です。
こども時代の「永久歯」の虫歯について
「永久歯=おとなの歯」であるにも関わらず、まだまだ顎が小さい6歳前後から生え始めます。永久歯は12歳頃までに約6年かけて、乳歯と交換したり乳歯よりもさらに後ろに奥歯が増えたりと徐々に生えていきます。 この永久歯を生涯使うことを考えると、乳歯に比べてとても長い年数ですよね。 こども時代に「どう永久歯を守るか」が、80歳まで20本の歯を残すという「8020運動」という目標達成に大きく関係してくるのです。
1.「8020運動」ってなあに?
厚生労働省と日本歯科医師会が提唱する「8020運動」とは、『永久歯28本(親知らずを入れた場合は32本)中、80歳まで20本自分の歯を残せるようにしましょう』という目標です。 「オーラルフレイル」という言葉を聞いたことはありませんか?「お口の衰え」のことをこう呼びます。高齢になりお口が衰えることによって歯も失う割合が増え、虫歯でなくても歯周病やさまざまな要因から歯を失いやすくなるのです。 80歳までに20本の永久歯が健康に機能していれば、食事もおいしく頂くことができ、心身ともに健康で過ごせることでしょう。そのためにはこどものころから永久歯をしっかり守ることが大切だということがわかりますね。
2.永久歯はもう生え変わりません!
80歳まで20本の歯を残すためにはこどもの頃からのケアが必須です。 永久歯は乳歯に比べて歯の質に厚みがあり、虫歯の進行具合も急速に神経に達するようなことは減ります。 しかし生えてすぐの永久歯の表面は、まだ組織が安定しておらず粗造なため、虫歯になりやすい時期です。また、乳歯に比べて複雑な形や噛み合わせの溝も深くなるため、歯磨きなどもより細かくおこなう必要があります。 生涯自分の歯で噛めるようにするためには、こどものころから虫歯になってしまうような事態を避けるためにも、引き続き定期検診を上手に活用し、虫歯の早期発見・早期治療を心掛けるようにしましょう。
3.まだまだ「仕上げ磨き」が重要です
永久歯に交換が始まると、抜けた場所や生えかけの時期は凸凹面が増えます。 また、顎の成長途中で大きな歯が生えることで、一時的に歯が並びきれずに重なってしまう部分が生じたりすることもあります。 このように、永久歯への交換時期を「混合歯列期(こんごうしれつき)といい、乳歯のころよりも歯磨きが難しく、こども自身の歯磨きだけでは不十分になってしまいがちです。 歯ブラシの当て方の工夫や細かい凸凹の部分の清掃は、仕上げみがきでサポートしてあげることが大切です。
もしもこどもが虫歯になってしまったら…?!
では、もしもお子さんが虫歯になってしまったとき、「こどもの虫歯治療ってどうやるの?」という疑問にお答えします。 治療方法は歯科医師によって異なる場合もありますが、ここでは基本的にどう進めるかのご紹介です。詳しくはかかりつけの歯科医院に確認してくださいね。
1.基本的な虫歯治療について
虫歯には進行度合いによってC0~C4と表現されます。 それぞれの段階でどのような治療になるのか、基本的な流れをご紹介します
・C0…初期虫歯 歯の表面のエナメル質が酸によって脱灰した状態 この段階はエナメル質表面の粗造になった部分が再石灰化することによって修復される可能性があるため、注意喚起したりフッ素を塗るなどの処置を施し、削ることは無く様子を見ます。
・C1…C0が少し進み始めた段階。まだエナメル質表面に留まっている状態 脱灰が少し進んでいますが、まだ削って治療する程ではなく、C0と同じく再石灰化することを期待しつつフッ素塗布などで様子を見ます。表面の凸凹が虫歯の進行に繋がるようであれば、表面だけ滑らかになるように器械で研磨することもあります。
・C2…虫歯がエナメル質の下の層の象牙質(ぞうげしつ)まで進んでしまった状態 脱灰が進行し、エナメル質を通過して柔らかい象牙質に達すると中で大きく虫歯が広がり始めます。 象牙質は中に神経が通っているため、飲食や歯磨きの際にだんだんと冷たいものや熱いものなどの刺激が伝わって痛みを感じるようになります。 この段階になると、虫歯になっている部分を削って詰め物をする、いわゆる「虫歯治療」が必要になります。 虫歯の深さでどれくらい歯質が残せるかによって詰め物や被せ物など、歯の修復方法が異なります。
・C3…虫歯が象牙質よりさらに進行し、中にある歯髄(しずい)にまで到達している状態 虫歯が歯髄という、いわゆる「神経」にまで達してしまうと、歯の痛みは継続的ににズキンズキンと痛むようになります。 神経がまだ壊死していない場合は一部の神経を残す治療方法もありますが、神経が壊死している場合は神経を抜く治療「抜髄(ばつずい)」をおこないます。 神経を抜いたら、神経が入っていた歯髄腔(しずいくう)が綺麗になるまで1週間に1回のペースでの洗浄と消毒での来院が必要です。 もしも歯の根っこに膿が溜まっている場合は、膿が排膿されるように歯に穴をあけたままの状態で治療に通うことになります。 膿が無くなり、歯髄腔の中が綺麗になったら、空洞にお薬を詰め、失った歯の形状を修復する治療をおこないます。 大抵の場合、ここまでくると歯の頭はあまり残っていないため、前歯であれば被せる形の人工歯をつくり、奥歯であれば噛む力に耐えれるように銀歯を入れることがほとんどです。 (あくまでも保険内の治療法であり、自費治療であればさまざまな修復材料があります)
・C4…虫歯が大きく進行し、歯の頭が無くなり残根しかなくなってしまった状態 歯は根っこだけの状態になってしまっている場合、修復したくても土台を作ることができず抜歯になることがほとんどです。 抜歯後は歯ぐきの状態が回復したのち、義歯(永久歯の場合はブリッジやインプラントもあり)などの人工歯の装置で補います。
2.乳歯の虫歯治療法のご紹介
虫歯の進行度(段階)によって虫歯は治療や修復方法に違いがあります。 基本的なものをいくつかご紹介します。
・C2の場合
乳歯はあまり複雑な形状でないことや、いずれ抜け変わることも考え、技工所で作製するような複雑な修復物を入れることはほとんどありません。 C2の段階であればほとんど、削った部分に歯と同じ色の軟らかいお薬を詰め、光を当てて硬化させたのち形を整える「レジン充填」という治療法が一般的です。 この方法は治療箇所にかかる日数が1日で終わるため、おこさんの負担を軽減できます。 まれに奥歯の大きな虫歯で歯の頭の歯質があまり残せなかった場合は、レジン充填では破折や脱落の可能性も高いので小児用の既成銀歯で対応することもあります。
・C3の場合
先にもお話ししたように、乳歯は生え変わりますが、後続永久歯が充当に生え変わるためには乳歯をできるだけ残すことが重要です。 神経が侵されていた場合には、乳歯も神経を抜いて歯の中の空洞を洗浄と消毒の治療をおこないます。 歯の中の空洞が綺麗になったらお薬を詰め、前歯であれば差し歯のような被せもの、奥歯であれば小児用の既成銀歯などで修復し、永久歯交換までできるだけ永久歯のためにも歯の根っこを温存させるようにします。
・C4の場合
乳歯も残痕状態で温存が難しい場合、やむを得ず抜歯することになります。 抜歯後はレントゲンで永久歯の位置を確認し、現在の年齢と併せてその後の治療を考慮します。 永久歯が生えるまで時間がかかりそうな場合は、人工的な入れ歯や装置を入れて乳歯があった場所のスペースを確保する必要があるのです。
3.永久歯が虫歯になってしまったら…?
永久歯も虫歯になってしまった場合はもちろん治療が必要です。 乳歯と違って抜け変わらない歯ですから、生えてすぐの虫歯になりやすい時期である「こどものころの永久歯」をどう守っていくかが、おとなになってからのお口の状態の良し悪しを左右すると言っても過言ではないでしょう。 永久歯になったら治療法はほぼ大人と同じです。虫歯が大きければ大きいほど治療回数もかかりますし、修復も複雑になりますので、できるだけ虫歯は初期のうちに対処していきたいものですね。
こどもの虫歯治療って大変ではないの?
では「虫歯治療を嫌がるお子さん」をどう治療していくのでしょうか。 歯科医院に行く前に、こどもの虫歯治療の流れについて理解しておくことで、歯科医院へ足を向けるのを少しでも楽に感じていただけるようになると思います。
1.泣いて大暴れするから申し訳ない…
いえいえ、お子さんは感情を抑えることが難しいものです。我慢できる子もいますが、ハッキリと「やりたくない!」という主張ができるおこさんは素晴らしいですね。 まず、歯科医院に「申し訳ない」気持ちは持たなくてもよいのです。もしもお子さんが嫌がるのであれば「小児歯科」に診てもらいましょう。 小児歯科は嫌がるお子さんの対応などをしっかり整えていますので、一般歯科で「暴れて治療できない」といわれてしまったお子さんは相談されてみてくださいね。
2.怖がって泣く子への対応はどうするの?
まだ理解の難しい低年齢児に関しては、どうしても治療が必要な場合は泣いたままでも治療が可能です。ただし体力的なことを考慮し、一度にたくさんの本数をすることは難しいでしょう。 3歳半以降くらいになればおとなの言うことが理解できるようになります。その頃からは「いまからどんなことをするのか」ということを歯科医師や歯科衛生士が説明し、使用する器械や道具を見せたり実際に触らせたりすることもあります。(tell show do法といいます) そうすることで恐怖心を取り除き、心の準備を整えてから治療に入る方法もあります。
3.小さなお口の中の治療、動いて危なくはないの?
確かにお子さんのお口は小さく、乳歯となればさらに小さな歯にできたミリ単位の虫歯を器械で削る治療をおこないます。 小児の対応に慣れた歯科医院であれば、「ラバーダム防湿」という方法をおこなうことがほとんどです。この方法は、ゴムのマスクに治療する歯だけが表面に出るように穴をあけ、歯のくびれ部分に固定して装着します。他の歯や粘膜、舌などはゴムマスクの下に保護されているため、万が一お顔が動いても器械で傷つけることを予防できます。 また、唾液が治療部分に侵入する事を防止するため、スムーズに短時間で治療をおこなうことができます。このような保護装置を使って虫歯治療をおこなうことで、おこさんの負担を軽減し、安全に治療ができる対策をとっています。
4.歯科麻酔(注射)はおこなうのですか?
虫歯治療に際し、必ずおこなうわけではありません。 比較的浅い虫歯の場合には、注射器による歯科局所麻酔をしないまま虫歯治療をおこなうこともあります。 神経に近い部分まで深く進行している虫歯に関しては、削る際の刺激が神経に伝わり激痛を伴うことがありますので、そのような場合にはおこさんにも使用する場合があります。 歯科局所麻酔を初めて使用する際には、アレルギー反応がないかどうかパッチテスト等をおこなうことがほとんどです。 もしも歯科局所麻酔が必要となった際には、問診の際に初めてであることや、お薬によるアレルギーがあるかどうかなどをきちんと伝えるようにしましょう。 「麻酔と関係ないのでは?」と思うような些細なことでも、お子さんに関する不安なことは事前に遠慮せず歯科医師や歯科衛生士に事前に伝えてくださいね。
まとめ
乳歯の虫歯は進行しやすく、乳歯と永久歯の交換期は歯並びも一時的に凸凹な面が増えてしまうため、こどもはおとなにくらべて虫歯になりやすいのです。 乳歯はいずれ抜けますが、抜けるまで健康な乳歯でいることが永久歯も健康で正しい位置に生えてくるためには必要です。 虫歯にならないようにケアすることも大切ですが、もし虫歯ができてしまったとしても早期に治療すれば、痛みを伴うような大きな虫歯になることを防ぐことができます。 泣いても嫌がっても大丈夫です! お子さんの歯を将来健康な永久歯へつなげるために、小児の対応ができる歯科医院で年に3~4回は定期検診を受けることをおすすめします。 定期検診を受けることで、80歳まで自分の歯を20本残すことができるよう、お口の健康に関して意識の高いおこさんへと成長してくれますよ。