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お口の健康コラム

もしかしてこどもって虫歯になりやすいの!? お口の環境と特徴を知り、虫歯予防に役立てましょう!

私はこどものころ虫歯治療でよく歯医者さんに通っていましたが、気づけば高校生の頃には虫歯で通うことは無くなっていた気がします。甘いものも大好きですが、おとなになって大きな穴の虫歯を治療するということも無いなぁと思いました。

みなさんの中にも「実は虫歯って、こどもに罹りやすい特性があるのでは?」と思ったことがある方はいませんか? 今回はこどもの虫歯になりやすさについて解説します。これを知れば虫歯予防にも役立てる事ができますよ♪

こどもって虫歯になりやすいの?

そう!実はおとなにくらべてこどもは虫歯になりやすいんです。 虫歯になるプロセス自体は、おとなもこどもも同じです。けれども、確かにおとなに比べてこどもの方が、虫歯になるリスクが高いんです。なぜなのでしょう…。 それは「乳歯」の性質や、こどものお口の中の環境が関係しています。

1.虫歯になるプロセスとは

 お口の中の歯に棲みつく虫歯の原因菌が、食事で摂取した糖分をエサにする際に副産物として発生させる酸によって歯が溶かされた状態が「虫歯」です。 おとなもこどもも、食事をすれば同じような現象が起こりますが、乳歯の方がこの条件が整いやすく虫歯になりやすい理由のひとつとなっているのです。

2.こどもならでは「生え変わり」の時期が関係している?!

6歳前後から、こどもは乳歯が抜けて永久歯に交換が始まります。

乳歯が抜けて永久歯が生え揃うまでの間は、歯の高さが低くどうしても凸凹してしまいがちです。また顎が狭く、大きな永久歯がきちんと並びきれずに重なってしまい、歯磨きしにくい部分が生じることもあります。虫歯になりやすい条件ができてしまうため、おのずと虫歯のリスクも上がってしまうのです。

3.こども特有の性質や環境の変化が関係している?!

ご紹介したように、こどもの時期は歯の性質自体がおとなよりも弱いことや、歯の交換に伴う歯並びの不揃いな状態などさまざまな理由から、虫歯のリスクがおとなよりも高くなってしまうことがお解りいただけたと思います。 他にもお口の環境に併せて、おやつの変化や増加など生活習慣の変化も相まって、さらにリスクを高くすることにもつながります。 次は「こどものお口の環境」について、おとなとは違うこども特有の特徴などを掘り下げて虫歯との関連を掘り下げてみましょう。

【年代別】こどものお口の中の環境と虫歯の関連を考えましょう

ひとくちに「こども」といっても、歯が生え始めたばかりの赤ちゃんと小学生・中学生では歯の数もお口の環境も性質も異なります。

まずはなりやすい虫歯やお口の環境などを年代ごとの特徴ごとに解説します。

1.生後6か月から前歯が生え始めます

歯が無ければ虫歯にはなりませんから、前歯が生え始めると同時に「虫歯のリスク」がスタートしたことになります。

まだ母乳やミルクが主であるおこさんも多く、前歯だけの時期はよほどのことがなければ虫歯ができるということは気にしなくても大丈夫です。

ただし離乳食が始まったり、頻繁に哺乳瓶を使って飲み物を飲む習慣があるおこさんは、虫歯のリスクが一気に高くなりますので注意が必要です。

特に歯と歯ぐきの境目の部分や、上の前歯の裏側のくぼみに汚れが残りやすくなりますので、歯ブラシの毛先をしっかり当てて汚れが残らないようにしましょう。

2.3歳頃には奥歯が生え揃います

奥歯が生え揃うと、前歯だけだった頃に比べ、虫歯を発症するおこさんが一気に増えはじめます。

奥歯は前歯に比べて臼のようなどっしりとした丸い形をしていて、歯と歯の間の接面も前歯に比べて広くなります。また、噛み合わせの部分には細い溝が複雑に走っており、この深く切れ込んだ溝に食べかすや歯垢が残りやすいのです。このように、前歯だけの時よりも汚れが残りやすい場所が多くなってしまいます。

また、3歳頃には幼稚園や保育園に通うおこさんも増えますし、お友達との交流も増えますので、保護者の方が管理する時間が以前よりも減ってしまいます。それだけ乳幼児期よりも幼児期の方が虫歯のリスクは高くなってしまうのです。

歯と歯の間にデンタルフロスを併用したり、食べたあとはうがいをするかお水を飲むなどの工夫をしてみてくださいね。1日の汚れを持ち越さないように、夜寝る前に保護者の方がしっかりと仕上げみがきをしてあげるのもとても効果的です。

3.6歳臼歯が生えてくる時期

乳歯の一番奥の歯(第2乳臼歯)の後ろに、6歳前後になると「第1大臼歯」という一番大きな永久歯が生えてきます。この歯は今後永久歯に交換し始めると、歯並びの中心となる重要な役割を持った歯です。

これだけ重要な役割のある永久歯ですが、生え始めてから完全に生え揃うまでにとても時間のかかる歯なのです。中には半年ほどかけながらゆっくりゆっくり生えることもあります。歯茎が被ったままの部分と歯との間に汚れが残りやすかったり、歯の背丈が低い時期が長いために歯ブラシが届きにくいこともあり、虫歯や歯肉炎になりやすい歯でもあります。

背丈が低かったり歯茎が被っている部分には、歯ブラシを横から突っ込むような形に挿入して、1本単独でしっかりと歯面にブラシが当たるようにして磨きましょう。

4.7歳前後に乳前歯が永久歯に交換し始めます

まだ顎の大きさが小さい時期から、永久歯への交換が開始されます。特に前歯は乳歯が抜けたスペースに永久歯が入りきれず、隣の歯と重なって生えるという状況がよくみられます。

中には一時的なスペース不足で、顎の成長と共にスペースが広がることでスペース不足が解消され綺麗に歯が並ぶこともありますが、いずれにしても重なっている時期に虫歯になってしまい、歯並びが解消されたり隣の歯が抜けた時に「隠れ虫歯」が見つかるということもあるのです。

歯並びが不揃いの部分は歯ブラシの角度を変えたり、先が細い形状の「ワンタフトブラシ」などを併用して、細かい部分もしっかり歯みがきしてあげましょう。

5.9〜10歳前後に乳臼歯が永久歯に交換します

乳臼歯が永久歯に交換し始める頃は、おやつを保護者の方の管理下で食べるということのほうが少なくなります。仕上げみがきも嫌がるようになる頃で、細かい部分まで行き届いた歯磨きが難しくなってくる時期でもあります。歯が抜けて隣の面が露出すると、隠れ虫歯だった虫歯が現れるということも少なくありません。

また乳臼歯が生え揃った時と同様に、永久歯も歯と歯の間の隠れ虫歯に要注意です。

永久歯への交換で歯並びが不揃いなうえ、おやつや食事の時間も不規則になりがちなので、お口の中の環境も虫歯のリスクがどうしても高まってしまう時期です。

仕上げみがきを嫌がるおこさんも増えるでしょうが、まだまだ自分の歯磨きでは不十分です。かかりつけの歯科医院で定期検診をうけていれば、歯磨き指導をしてくれたり虫歯予防を継続して受けることができるので、この時期は継続されることをおすすめします。

6.12歳以降の青年期

永久歯が生え揃った後も注意しなくてはなりません。

今度はおとなへと身体が変化するのと同じように、ホルモンバランスの変化などもお口の環境と関連することがあります。歯周病のリスクも高まる時期でもあり、食べかすや歯垢の刺激で歯肉炎を起こし易くなったりもします。

お口の環境が悪ければ、虫歯の原因菌の動きも活発になりやすく、虫歯のリスクも注意が必要になります。 定期検診で歯医者さんに管理してもらうことや歯磨き指導を受けることで、お口の健康を守ることの大切さを学ぶこともできます。自ら進んでオーラルケアのできるおこさんに成長するためにも、引き続き定期検診の継続が重要になるでしょう。

こどもの虫歯、どんな予防をすればいい?

おとなに比べてこどものお口の中は、わずか12年間の間に目まぐるしい成長や変化があります。この期間に乳歯から永久歯へとスムーズな交換をおこない、将来丈夫な永久歯を80歳まで20本残すためには、乳歯のころからしっかり虫歯予防をおこないたいものですね。

1.まずは毎日の正しい歯磨きを!

こどもの虫歯を予防するのに最も効果的な方法は「歯磨き」です。

食事の回数だけ歯磨きをする、もしくは食後の食べかすが残留しないように水を飲むなど、お口を清潔に保つことを心掛けましょう。

もちろん歯磨きは正しい方法で行われていないと効率的に汚れは落ちてくれません。いくら食後の歯磨きを毎回おこなっていたとしても、磨き残しだらけでは意味がないのです。

おこさんが小さい頃は、保護者の方も正しい仕上げみがきをマスターして取り組んでいただきたいと思います。 そのためにも、先ほどの「定期検診」を受けることが大切なことであるということにも繋がってくるでしょう。

2.清掃補助具を併用しましょう

歯はとても複雑な形をしています。また、歯と歯の間や歯並びが凸凹している部分、矯正器具を付けている場所など、歯ブラシの毛先が届きにくい部分には補助具がおすすめです。

 歯ブラシでの清掃では、お口の中の汚れの60%程度しか落とせていないとされており、デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシ、ワンタフトブラシなどの清掃補助具を使用することで85%以上に上がるというデータもあります。

上手に仕上げみがきを受けることができる年齢になったら、歯ブラシ以外の清掃補助具も取り入れてみてくださいね。

3.フッ素を活用しましょう

最もポピュラーな虫歯予防として「フッ素塗布」があります。

歯科医院で受けるフッ素塗布に使用される濃度であれば、3~4カ月に1度のペースで塗布するだけで効果が持続するとされているため、定期検診のペースで継続的に塗布する方法がベストです。

また、ホームケア用のフッ素も市販されていますので、自宅でフッ素ケアを取り入れたり、フッ素入りの歯磨き粉を使って歯磨きするなど、手近な方法でも取り入れることができます。

4.歯科医院で受けるシーラント予防も効果的です

こどもの虫歯の好発部位のひとつである「奥歯のかみ合わせ」の細かく切れ込んだ溝に、薬剤を流し込み固めます。この処置によって溝を浅くすることで、歯ブラシの毛先も入り込めないような細かい溝から侵入する虫歯を予防する方法です。

歯の表面や歯と歯の間、歯と歯茎の境目の歯垢は、正しい歯磨き法をおこなうことで歯垢が残らないようにすることができますが、奥歯の溝に入り込んでしまった汚れは通常の歯磨きでは落しきれません。この予防をすることで奥歯の溝を保護する効果は、90%以上といわれています。

5.唾液をたくさん分泌させましょう

唾液には「自浄作用」という働きがあり、お口の中の汚れを自然と洗い流してくれる作用があります。また「抗菌作用」があり、お口の中を潤してくれているだけで、常在している虫歯の原因菌の繁殖を抑えてくれるのです。

そして「歯の再石灰化作用」も備えており、歯の表面が脱灰(だっかい)といわれる溶け始めの初期虫歯になったとしても、歯質を強化して修復する効果をもたらしてくれます。

顎を動かすことで唾液腺を刺激し、分泌を促進することができますので、噛む回数を増やす食事の工夫や、お口を使った遊び(笛を吹いたり風船を膨らませるなど)を取り入れてみてくださいね。

6.歯科医院で検診を受けましょう

幼稚園や保育園に通園するようになれば年に1回歯科検診があります。それ以降は小中学校でも年に一度学校歯科検診を受けますよね。しかし集団検診ではライトや整った設備もない中でおこなわれるため、詳細な診断がしづらいのも事実です。

また、これらの公的検診を受けるようになるまでの0歳~3歳頃の時期のケアもとても大切。まして虫歯になりやすく進行しやすい乳歯となれば、年に1回の歯科検診では足りません。

歯科検診は年に3~4回、3~4カ月に1度のペースで受けることをオススメします。 早期発見・早期治療や、プロによる虫歯予防処置を受けること、歯科衛生士からの保健指導も十分虫歯予防につながりますよ。

こどもが起こしやすい虫歯トラブル

次に、こどもだからこそ起こしやすい虫歯に関するおくちのトラブルをいくつかご紹介します。身体によいからといった方法も、実は虫歯のリスクを高めているかもしれないのです…。

1.哺乳瓶う蝕(ボトルカリエス)

卒乳の時期が遅くなり、離乳食期を過ぎても長期に渡って母乳やミルクなどを飲み続けていたり、イオン飲料やジュースなどを水分補給として頻繁に常飲しているおこさんに多く見られる虫歯です。

前歯の表面全体や前歯の裏側に多発するのが特徴で、穴になるというよりも白く白濁するために気付かないうちに増えているということもよくあります。

寝かしつけの時に沿い乳をしたり、寝る前に牛乳を飲む習慣があるなどのおこさんは注意が必要です。特に就寝中は唾液の分泌が減少し虫歯菌の活動も活発になり、一番虫歯になりやすい時間帯です。寝る前に飲んで寝るという習慣は改善することをおすすめします。

2.発熱時の水分補給によるランパントカリエス

幼いころはよく発熱を起こします。その際、脱水症状の予防や体力の回復のためにイオン飲料を飲む方が多いと思います。

もちろんこまめな水分補給は大切ですが、発熱時のような免疫力が低下している時期はお口の中も唾液の分泌の減少やお口の渇きなどで菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。

また、この間に歯肉炎や口内炎を起こしたり、もちろん虫歯のリスクも高くなってしまいます。 可能であれば時々うがいをしたり、できるようであれば発熱中も歯磨きをするようにしましょう。

3.口呼吸癖による口の渇きから虫歯に…

本来平常時には口を閉じて鼻呼吸するのが自然な呼吸ですが、最近では小学生の約8割は口呼吸だといわれています。

常にお口で呼吸しているとお口の中を唾液で潤すことが難しく、お口の中は常に渇いた状態になりがちです。虫歯の原因菌が増殖しやすくなるため虫歯発生のリスクも高くなりますし、お口からさまざまな菌やウイルスを摂り込んでしまい、病気になるリスクも高くなってしまう可能性もあるのです。

4.スポーツ飲料や野菜ジュースの誤解

わたしたちの生活の中で、栄養素をスポーツ飲料や野菜ジュースなどで補給するという商品が増えています。 炭酸ジュースなどを飲むよりは…と選ばれる方も多いですし、朝の忙しい時間にサッと栄養が取れて便利ですよね。野菜嫌いの小さいおこさんも、飲料であれば飲んでくれるので活用しているという方もたくさんいらっしゃるでしょう。

けれどもこれらには「糖分」も多く含まれていますし、「カロリーオフ」のものであっても酸性の飲み物であれば歯が脱灰してしまいます。

「飲んではダメ」ということではなく、飲み方に注意すれば栄養補給などとてもよい効果をもたらしてくれる飲み物です。

一番危険なのは、これらを哺乳瓶や水筒に入れて常飲することです。水分は「水」で十分摂れます。できるだけ栄養は本来の素材から摂ることを心掛けて、水分補給で持ち歩くのであれば水かお茶にしておきましょう。

まとめ

こどもの成長はとてもめまぐるしく、人生80年と考えると、とても短期間の間におとなになる準備をします。とても素晴らしいことですね。

お口の成長も同じく、短期間でお口の中の性質も環境も変化します。おとなに比べて虫歯やお口のトラブルを起こしやすい時期であり、また成長段階の中で起こしやすいトラブルにも違いがあります。

虫歯になって歯科医院に来院されてお話しすると、みなさん必ず「もっと早くに知りたかった」と言われます。 おこさん特有のお口の変化を事前に知っておくことで、虫歯予防にも大きく繋がると思いますので是非参考にされてくださいね。

  • 記事を書いたライター
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江頭 小百合(歯科衛生士)

3姉妹の母、歯科衛生士ライターとして活躍中。小児歯科の現場や母親としての経験を活かし、お口の悩みやギモン、歯の健康に大切な情報をみなさんに楽しく・解りやすくお伝えしてもらっています。「418PROJECT」、歯科衛生士スタディグループ「Hygeia(ヒュギエイア)」在籍。

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