
みなさん歯科検診は終わりましたか?集団歯科検診の結果用紙の歯並びについての部分で、「歯並びに何らかの問題があります」と書かれたことがあるという方、多いのではないでしょうか? 幼稚園の年中・年長くらいから、小学生・中学生あたりまでに、歯はちょうど交換期を迎えます。 歯科検診の多いこの時期に、是非お子さんの歯の生えかわりのことや、それに伴う歯並びとの関係性などを知っていただきたいと思います。
1.乳歯が永久歯に交換するプロセスを知ろう!

乳歯が永久歯に交換するのはなぜ?
乳歯が永久歯に生え変わるのは、顔や顎、全身の成長に対応するためにおこなわれます。人間の歯の生えかわりは、乳歯が永久歯へ生えかわるその1回だけなんです。
赤ちゃんは1歳頃までには離乳食を経て母乳やミルク以外の食事をするようになりますよね。そこでまずは食べることに対応できるように小さなお顔に合った乳歯が生後1~3歳半までくらいに生え揃います。
その間、永久歯は歯茎の中で硬くて丈夫な歯となるために約6年の長い年月を過ごします。そして顎や筋肉の成長に伴って、乳歯から頑丈な永久歯へと生えかわるのです。
人間の歯はいつ頃から作られているの?
乳歯は胎生7週頃から10週頃に歯胚(しはい)という歯の基になる部分を作り始めます。
お母さんがまだ妊娠に気付かないこともある程の妊娠初期の頃です。そして、胎生13週頃には永久歯の歯胚も作られ始めるのです。
2.永久歯に交換し始めるのはいつ?

いつぐらいから永久歯が生えはじめるの?
5、6歳頃になると、永久歯が生え始めます。
ひと昔前までは一番最初に、6歳臼歯(6さいきゅうし)といわれる永久歯が、乳臼歯(にゅうきゅうし)の奥に生えてきていました。しかし、最近では下の歯の乳中切歯(にゅうちゅうせっし)が最初に抜け変わる方が早くなってきています。
抜け始める時期には個人差があります。ですから周りのお友達が抜けたからといって焦ることはありません。
どこの歯からどんな順番で抜け始めるの?

乳歯は以下のような順番で抜けて永久歯と交換します。
1.下顎乳中切歯(かがくにゅうちゅうせっし)…下の歯の一番真ん中にある歯
2.上顎乳中切歯(じょうがくにゅうちゅうせっし)…上の歯の一番真ん中にある歯 下顎乳側切歯(かがくにゅうそくせっし)…下の歯の中央から数えて2番目の歯
3.上顎乳側切歯(じょうがくにゅうそくせっし)…上の歯の中央から数えて2番目の歯
4.乳犬歯(にゅうけんし)…と呼ばれる、中央から数えて3番目の歯
5.第一乳臼歯(だい1にゅうきゅうし)…乳犬歯のすぐ隣の奥歯
6.第二乳臼歯(だい2にゅうきゅうし)…第一乳臼歯より奥に生える臼歯
5~6歳ごろになると①の歯から抜け始め、段々と奥の歯へと抜け変わります。
基本的に同じ種類の歯であれば、下の歯の方が早く抜け、乳歯は小学生の間にはすべて交換するくらいのペースで抜け変わります。
乳歯の一番奥の歯のさらに奥に歯が生えてきたけど親知らず?
乳歯の一番奥の歯のさらに奥に出てくる歯は親知らずではありません。これは6歳臼歯(6さいきゅうし)と呼ばれる大人の歯です。
時々この歯を親知らずが生えてきた!と勘違いされることもありますが、この歯は乳歯と交換なしで増えるべき重要な歯なのです。
ちなみに親知らずといわれる「第三大臼歯(だい3だいきゅうし)」は、全ての人が必ず生えるわけではなく、18~20歳頃になると生えてくる人、歯茎に埋まったままの人、もともと無い人に分かれます。
3.6歳臼歯ってなあに?

噛み合わせの中心となる重要な歯

6歳臼歯(6さいきゅうし)は、乳歯の奥に生える永久歯で、読んで字のごとく6歳頃になると生えてくるためこう呼ばれています。
永久歯の歯並びを作って行くための「噛み合わせの中心」となって歯並びの基礎を作る重要な歯。
そして、永久歯の中でも大きさは最大!そのため噛む時にかかる力も一番大きくかかります。
この歯を無くしてしまったら…と考えると、いかに大切にしなくてはいけない歯であるかがわかりますね。
虫歯になりやすい!
6歳臼歯は虫歯になりやすい歯だと言われています。それは、噛み合わせ部分にある溝の深さが、他のどの臼歯よりも深いため、汚れが残りやすい形状にあるためです。
また、生え始めて完全に歯の頭が出てしまうまでにとても時間のかかる歯ですから、背が低く歯ブラシが届きにくいことや、歯ぐきが被った部分やに汚れが溜まりやすくなってしまうことも理由のひとつです。
噛み合わせの中心となる重要な永久歯であることを考えると、虫歯が悪化してしまい歯を失ってしまうことにならないように、しっかりと歯磨きしてあげましょう。
4.交換期の歯並びについて

乳歯がすきっ歯なんだけど大丈夫?
時折、前歯の乳歯にすき間があることを気にされる親御さんもいらっしゃいます。
実は本来、乳歯はすき間がある位の方がよいとされているのです。
乳歯が交換し始める時期は5~6歳頃。その時点では、まだまだ顎の大きさは成長途中の小さい顎です。そこに大きな永久歯が並ぶのですから、すき間があったほうが歯がきれいに並びやすいとされています。
前歯が抜け変わったら永久歯がガタガタで心配です
まず、前歯だけが抜け変わった時期にガタガタな状態は、よくあることなので心配いりません。
最近のお子さんは乳歯の時点ですき間なく詰まっているお子さんが多くなっています。これは、生れてから6歳までくらいの間に顎の骨の成長が不足してしまうことで起こると考えられています。
そこに大きな永久歯が生えてくるためスペースが足りず、歯が重なってしまう並び方になるお子さんが多いようです。
ですがその後の顎の成長や、奥歯の抜け変わりでスペースが広がることによって歯が自然と並び、前歯の重なりが徐々に解消されることもあります。
乳歯が抜けてないのに永久歯が見えてきてしまっていますが放っておいて大丈夫?

抜けきれない乳歯をそのままにしておくのか、永久歯が並びやすくなるためのスペースを開けてあげるために抜歯をするのか等は、放置せず歯科医院で詳しく診断してもらうことをおすすめします。
本来の歯の生え変わりは、乳歯の下にある永久歯が生えてこようと乳歯を下から押すことによって、乳歯の根っこが吸収されて短くなり抜け落ちるというプロセスです。
しかし、永久歯が乳歯の根っこを上手に押せずに根っこの一部が残ってしまうと、永久歯がすでに出てきているのにも関わらず乳歯が抜け切れずに残ってしまうことがあります。
そのまま放っておくと永久歯が歯列からはみ出した場所に生えてしまい、歯並びが悪くなる原因にもなりかねません。もしもご家庭で気づいた場合には早めに歯科に相談してみましょう。
乳歯がぐらぐらしてきたな?と思ったら、勝手に親が抜いてもいい?
グラグラ揺れている歯は早く抜いてあげたほうがいいのでしょうか?これは全てYESとは言えません。 たとえば、まだ永久歯が出てきていなくても、いつ抜けてもおかしくない揺れで、出血が続いたり痛みがある場合には歯科医院でも抜く場合があります。しかし本当に稀なことです。
特に親御さんでは「どのくらい揺れていたらどの程度歯の根っこが短くなっているか」ということは解りませんよね?
早く抜いてしまうと、永久歯が歯茎の外へ出るための道しるべを失うことになってしまいます。 また、早く歯が無くなってしまうと、すぐに永久歯は生えてこないため、失った歯の両側の歯が寄ってしまい、永久歯が並ぶスペースが足りなくなる原因になってしまう恐れがあります。
ですから自己判断で歯を無理やり抜いてしまうのではなく、気になったらまずは歯科医院で診てもらうようにしましょう。
なるべくキレイに永久歯が並ぶコツはありますか?
骨格は生まれ持っているものや生活習慣など個人差があります。ですから何をしたら歯並びが良くなるという決定的なものはありません。
しかし考えられるとすれば「顎の成長」がきちんと進むように誘導してあげることで、小さな顎にガタガタに並んでいた永久歯も増えたスペースに動いてくれる可能性が増えます。
顎の成長にはまず「よく噛む」ということが大切です。柔らかい食べ物が増えている現代食だけでなく、スルメやこんぶなどのような硬いものを噛む食事を心掛けてみましょう。
このようにお口の機能を上げてあげる生活習慣を送れば、自然と永久歯が並んでくれる環境になるというわけです。
歯列矯正はいつから始められるの?
歯科検診などで「歯並び」に要注意と記載されていると、歯並びを気にされる親御さんも多いと思います。 幼児期から学童期の歯並びは不安定で、生えてきた場所で固定されるのではなく、他の歯の交換や顎の成長に伴って動きがあります。
歯科医師によっても考え方がさまざまで、すぐに矯正した方がよいと言われたり、別の歯科医院ではまだ早いですと言われたりすることがあります。
成長発育期の子どもたちの歯科矯正をいつ始めるのがよいのかについては、同じ歯科の中でも矯正専門医と小児歯科など、考え方が異なるのが実状です。
そして、発育成長期のお子さんの矯正治療の考え方は、大きく分けて3つのタイプで言われることが多いようです。
1.できるだけ早くはじめる
歯並びが悪いと思ったらその部分から早く治療するのは、見た目も早い時期から改善されてくるため希望するという方も多いでしょう。しかし先にご紹介したように、交換期の歯並びは成長と共に変化しますので、早くから矯正装置を入れているのになかなか改善が見られなかったり、また後戻りしてしまう可能性もあります。そのあたりのデメリットも加味して治療を受ける必要があります。
2.永久歯の歯並びと顎の成長をコントロールする処置をする
歯並びのために「成長をコントロール」するということは矯正医の中でも賛否両論あります。
実際、きわめて複雑で個々にさまざなは成長発育をコントロールするということは難しいことで、完全にコントロールして成功するという保証が無いからです。もちろん成功する例もたくさんあるので、一概にこの方法が間違っているというわけでもないのです。
3.顎の成長が落ち着くまでは見守り、成長に伴って開始する
この方法は個々の成長変化を見極め、成長がある程度完了するまで見守る方法です。ただし、しばらくの間は歯並びが悪いままの時期があるため、むし歯や歯周病などに罹りやすくなってしまいます。そこでその時期に必要なケアをおこないながら、矯正開始時期になるまで管理します。定期的な検診がとても重要になりますので、根気よく通院することが大切です。
このように、矯正方法の方針には違いがありますので、どの考え方で進めたいのかによって歯科医院を選ぶことも重要なポイントになりますね。歯科医院に来院し、診療方針やお子さんの治療計画をしっかりと理解し、どの方法で進めるか十分話し合って納得の上で始めることをおすすめします。
5.歯並びのために交換期に気を付けておきたいことって?

歯並びが悪くなってしまう原因ってどんなこと?
歯並びが悪くなってしまう原因はさまざまあります。
1.顎の成長が上手におこなわれないと、歯の並ぶスペースが足りなくなって歯並びがわるくなってしまいます。
2.歯並びや顎の変形につながる癖(くせ)。たとえば指しゃぶりや頬杖などは強い力が定期的にかかるため、顎の変形につながります。顎が変形すると歯列が乱れ、当然並ぶ歯も歪んでしまいます。
3.口呼吸、歯ぎしり、舌癖(舌で前顎部分を押したり舌を前へ出したりする)などの無意識におこなってしまうお口由来の癖。
直接的に大きな力が加えられていないようで、実は歯並びへのダメージは大きく出てしまうのです。
歯並びはさまざまな要素が重なり合って形成されていきます。個人差もありますので、気になる場合は歯科医院で相談されることをおすすめします。
生え変わりの時期に気を付けた方がよい歯磨きの仕方ってある?
生え変わりの時期に気を付けたほうがよいのは、通常の磨き方だけでなく、この時期ならではの歯磨きを実行することが大切です。
歯が重なった部分ができていたり、生えはじめの歯の背丈が低く凹凸ができてしまう時期のため、食べかすや歯垢(しこう)などの汚れが溜まりやすく、歯ブラシも届きくいため虫歯になりやすい期間。
凹凸のある部分には歯ブラシが届きにくいので、その部分だけ歯ブラシを縦にしたり、角度を付けて突っ込みながら磨くようにするとよいでしょう。可能であればデンタルフロスをするのも効果的です。
生え変わりの時期の食生活で心掛けたいことは?
この時期は歯が生え変わるだけでなく、顎の成長期でもあります。顎の成長がスムーズにいくようによく噛んで食べることが出来る食材を気にかけて食べ、顎の成長を促してくださいね。
また、虫歯になりやすい時期という事もありますので、ダラダラ食いをせずおやつの時間を決めて食べることや、歯に残りやすい(くっ付きやすい)おやつを控えるなどの工夫も大切です。
交換期によい歯磨き剤やフッ素などのケア用品は?
交換期に気を付けたいこととして「むし歯予防」が挙げられていましたね。
そこで、生えてすぐの歯はまだ歯の質が弱いため、「フッ素塗布」が効果的です。
フッ素には歯の質の強化したり、再石灰化という働きによって、溶け始めの初期虫歯を修復したりする効果があります。
フッ素は歯磨き剤にも配合されていることが殆どですが、スプレータイプやジェルタイプのフッ素を併用して塗布するのもよいですね。毎日の継続的なケアと組み合わせれば、より効果がUPすることにもつながります。
6.まとめ

お子さんのお口の中は日々変化します。信頼して通うことが出来る「かかりつけ医院」があれば、お口の変化を継続的に診てもらえますし、通院しながら矯正するべきか相談することもできます。
乳歯の交換にはちゃんと意味があり、お子さんの成長の証でもあります。
交換期の間はむし歯や歯並びなどに悩む方も多いと思いますが、まずは歯の交換の仕組みを理解し、お子さんの成長を見守ってあげてくださいね。
また、歯の交換には生まれ持った骨格の違いや顎の成長など個人差があります。矯正を始める時期もさまざまな見解があり正解な時期を決めるというのは難しいのです。
歯科医院には「定期検診」というシステムがあります。是非活用してくださいね。