虫歯予防のために歯科を定期的に受診することはとても大切。しかしもっと大切なのは「日々のホームケア」です!でも、そのホームケア法は合っているのか。どの方法が果たして正しいのか。また、悩んでいることは我が子だけなのでは?と不安になったりすることもあると思います。
今回418プロジェクトは子育て真っ只中のママと交流会をおこない、みなさんが日頃おこなっている虫歯予防法やホームケアについて、他のママがおこなっている方法のシェアや、今お持ちの疑問や困っていることなどをざっくばらんにお話ししていただきました。 そこで、この交流会で特に多く挙がった疑問・質問を皆さんと共有したいと思います。
【参加者さん】
上は小学校5年生から下は0歳児を子育て中の9人+ママ歯科衛生士で虫歯予防についての交流会をおこないました。
まずは自己紹介で和やかに♪
はじめましての皆さんが多かったこともあり、まずは皆さんに自己紹介と今回参加したキッカケなどをお話しいただきました。今回参加したキッカケとして今のお悩みをお話しされる方も多く、まだ小さいお子さんを「虫歯にしたくないから学びたい!」という意識の高いママさんばかり。さまざまなお悩みや質問が挙がりました。
〇歯の生えた状況と使っている歯ブラシは合ってる?
〇歯磨きを嫌がって逃げ回られてしまいます
〇いつ頃からフッ素を始めたらいいの?
〇奥歯の溝が深いけどシーラントしたほうがいい?
〇病院嫌いなので歯科受診もためらっています
〇家族に虫歯が多いので我が子もそうなるのではと心配
〇指しゃぶりするので将来の歯並びが心配 etc…
おおお!! 皆さん本当にたくさんのお悩みをお持ちです。 中には歯科医院の定期検診を受けている方もいらっしゃいましたが、果たしてその歯科医院の方針でいいのか迷われていたり、歯科衛生士さんにもっと質問したいけど、診療が忙しそうでじっくりお話できない…。というご意見もありました。
次に、皆さんが現在おこなっている虫歯予防を教えて頂きました
・歯科医院でフッ素を塗布している
・月齢ごとでステップアップする歯ブラシを使っている
・1日のうち夜はしっかり歯みがき
・フッ素スプレーを使用している
・殺菌作用のあるとされるマヌカハニーを舐めさせている etc…
最近では意識の高いママも多く、歯磨きグッズや清掃補助具なども活用されている意見があり嬉しいご意見でした(o^―^o)
しかし、皆さん半信半疑で使われていたり、そもそも使うべき時期なのかというところであと一歩!ということもあり、虫歯予防についての基礎知識を持っていただくことでもっと予防効果をアップして頂きたい!と感じました。
そこで次は歯科衛生士の観点から虫歯予防のお話をさせて頂きました。
虫歯予防のためには「虫歯ができる原因」を正しく理解することが大切です!
虫歯は砂糖だけが原因ではありません。虫歯になるプロセスはいくつかあり、正しく理解して日常生活の中で少しずつ気を付けることが大切です。
口腔内常在菌が砂糖をエサにして分解する際に出す「酸」によって歯が溶ける
まずは食事をすることで虫歯ができるプロセスをお話ししました。 歯が生え、口内に虫歯の原因菌がある環境下に糖分が摂り込まれると、虫歯の原因菌が糖分をエサにした際の副産物として「酸」を産出します。これが歯の表面を溶かす「脱灰(だっかい)」という現象を起こし、修復されずに脱灰を繰り返すことで虫歯の原因になります。
歯の表面に歯垢が沈着したままだと、宿巣にしている虫歯原因菌の「酸」で歯が溶ける
歯の表面は歯磨きされない時間が長く続くと、表面に「バイオフィルム」という細菌の膜ができます。ここに磨き残しから産出された歯垢が付着し、さらに歯垢の中を虫歯の原因菌が宿巣として増殖し、延々と酸を産出し続けるため、歯垢の付着した部分が溶けて虫歯になってしまいます。
「酸性」の飲食物の常食・常飲で歯が直接溶ける
虫歯は常在菌が原因になるだけではありません。酸性の飲食物を常食・常飲していることで直接的に脱灰を繰り返して虫歯になることがあります。
たとえば、野菜嫌いのお子さんに水分代わりにもなるからと、野菜ジュースやくだものジュースを常飲させている。なんてことはありませんか?
また、スポーツをしているお子さんは、熱中症や脱水予防のためにスポーツ飲料を常飲しているというケースも多くあります。頻繁に酸性の飲食物が口内に摂り込まれることで、口内が酸性になっている時間が長くなると、歯は溶けて虫歯になってしまうのです。
食事で口内が「酸性」になり、ダラダラ食べ続けることで中和されず歯が溶ける
少食だからと食事の回数が多いお子さんや、オヤツをダラダラと食べているお子さんは、口内が中和されるまでにとても時間がかかります。
歯の表面のエナメル質は「酸」に弱いため、口内が酸にさらされる時間が長くなると歯が脱灰したままの時間が続き、そのまま虫歯になってしまいます。
虫歯になる原因やプロセスを聞いて質問の嵐!!
みなさん、とても真剣に虫歯がどうしてできるのかを聞き、理解してくださいました。 そしてその後、途切れることなく質問の嵐が巻き起こります!
皆さんの中で多かった質問と、虫歯の原因は「砂糖」ということは解った上で代用していた甘味料の勘違いが印象的だった質問2つをご紹介します。
毎食ごとに歯磨きしないと虫歯になってしまうということですか?
勿論それが理想です。でも、外出先やご機嫌斜めな時などもありますよね。もしも歯磨きが難しい場合はお水を飲んで口内をできるだけ流したり、ブクブクうがいするだけでもよいですよ。できるだけ早く口内を中和できればすぐに歯が溶けたりはしません。寝る前にしっかりその日の汚れを落として寝るのが一番ベストです!
また、歯垢は食べてすぐにできるわけではありませんので、「朝上の歯しか磨けなかったとしたら、お昼の歯みがきは下の歯からやる」とか、「夜ご飯のあとの歯みがきでデンタルフロスを取り入れる」といったように、1日の汚れを1日トータル磨けていれば大丈夫です!
寝る前に口内の殺菌にもなるのでマヌカハニーを食べているのは大丈夫ですよね?
まず、マヌカハニー自体は砂糖よりも虫歯になりにくい甘味として代用できるものではありますが、純度が100%でなければ水あめなどが入っているものもあります。ですから必ずしも安全とは言い切れないんです。
また、摂るタイミングとして寝る前というのがちょっと危ないですね(;^ω^) 先にお話ししたように、虫歯は糖分だけが原因となるわけではありません。歯磨きが終わった後に何か口に入れて寝ること自体、就寝中は唾液分泌が減少して虫歯になりやすいので避けたいことなんです。
そして、根本的なことにもなりますが、甘いものを舐めないと寝れないという習慣も改善したいですね。甘いものは依存性がありますので、今はママが管理できていますが、目が離れるようになって甘いものを食べないと落ち着かないお子さんになってしまうのも心配です。これらは他の代用甘味料にも言えることですね。
仕上げ磨きについての質問もありました
そして皆さんが一番関心が高かったのが「歯みがき」についてです。特に小さいお子さんがいらっしゃるママは仕上げ磨きを嫌がられることで苦労していらっしゃる意見が多く挙がりました。
歯磨きが嫌いで逃げ回ります。仕上げ磨きもさせてくれません
小さいお子さんの場合は、まず「歯みがきは楽しいもの」とイメージ付けしていただきたいと思います。羽交い絞めで無理矢理歯ブラシをお口に入れてするのはNG。初めは嫌がって仕上げできなくても、毎回仕上げ磨きの際に同じDVDやCDを流したり、楽しい雰囲気づくりを繰り返ししてみてくださいね。
我が子は毎回歯みがきDVDと手鏡を持たせていたら、曲が聞こえると自分で歯ブラシと手鏡を持ってきて膝にコロンと寝てくれるようになりましたよ♪
聞きわけができるようになってから仕上げ磨きは嫌がらずに寝転んでくれるようになりました。でも、舌が邪魔して仕上げ磨きしにくいんです
舌が無意識に歯ブラシを追いかけてしまうんですね。そういうお子さんは、もし聞き分けのできる年齢であれば磨きたい側と逆側のほっぺを触りながら「こっちのほっぺをベロで触ってみて~」と声かけすると、舌を避けて歯が磨きやすくなりますよ。「こんどはこっち~♪」という感じで追っかけっこのような遊び感覚の声かけでやってみてくださいね。
(参加者ママさんからのアイディア)
うちの子は仕上げ磨きする際も自分の歯ブラシを口に入れたままにさせていますよ。そのほうがお口が閉じないし、仕上げの歯ブラシが入ってきても嫌がりません。
なるほど! 上手に寝転んで仕上げ磨きできるお子さんは、そんな工夫もできますね。 お子さんの年齢やタイプにもよりますが、みなさんのアイディアもとても参考になります。
仕上げ磨きって何歳までしたらよいですか?
目安は10歳頃までと言われていますが、嫌がらないのであれば決まりは無いので続けてあげてください。
どんなにしっかり磨いている人でも、汚れは60%しか落とせていないといわれています。特にお子さんは歯の表、裏、カーブ、噛み合わせといったように、複雑な歯面に歯ブラシを意識して当てることは難しいですよね?
我が家の長女は今年15歳ですが、今でも時々「ここが磨けたか解らないから磨いてくれる?」と言ってくることがありますよ。仕上げ磨きやチェックしてもらうことに抵抗が無く育っていれば、歯科に関しても意識の高いお子さんに育ち、それが健康意識の高さにも繋がってくると思います!
公的な歯科検診は受けていますが問題ナシ。歯科医院の定期検診は必要ですか?
やはり皆さん、公的な検診と歯科医院の検診を混同していらっしゃるようでしたので、違いや必要性についてお話ししました。
公的検診はあくまでも目安です
公的な1歳半・3歳児検診での歯科検診はあくまでも「きっかけづくり」や「目安」に過ぎません。保険センターなどの施設では椅子と椅子を向かい合わせて膝の上で診ることしかできず、歯科用ライトも唾液や食物残渣を排除することもできません。大きな虫歯があるお子さんの歯科受診を促したり、噛み合わせなどを注意喚起することが主な目的です。
これをきっかけに、歯科医院での定期検診を活用し、歯科医院の整った設備でしっかり隅から隅まで診てもらえればと思います
歯科医院の定期検診で虫歯予防(シーラント・フッ素)を受けたくありません
私は歯科の専門家として、シーラントとフッ素のどちらも安全性と予防効果を理解した上でお勧めしておりますが虫歯予防を実際受けるかどうかは関しては患者様の任意です。身体に害はないといわれてもできるだけ自然に子育てしたいとお考えの方も増えており、最終的には保護者の皆様がどうするか決めて頂いて良いと思っています。
ただし、虫歯になりやすい時期のお子さんに何もしなければ虫歯のリスクは高くなってしまいますので、虫歯から歯を守るには保護者様の努力はかなり必要になります。嫌がるお子さんが仕上げ磨きをさせてくれないこともあるでしょう。
パパやママがイライラしながら磨いたり無理やり押さえつけて磨くよりも、シーラントやフッ素の予防効果もあるのだからという余裕があれば優しく笑顔で仕上げ磨きできるのではないでしょうか?
レントゲン撮影は必要なのですか?
レントゲン=放射線というイメージから、できれば撮影したくないとお考えになるお気持ちお察しいたします。しかし歯科の線量は、内科で撮影される胸部エックス線などと比較してもかなり微量です。また、放射線は一度に多量の線を浴びた際に中毒症状を起こすことから、歯科の線量を1度の撮影で浴びる程度は、身体に悪影響を及ぼすような事態にはなりません。
むしろ、レントゲン撮影しないままでいると、歯と歯の間に虫歯ができている場合に肉眼で探すことができないため、痛みや急に大きな穴が開いたことで気づいて歯科医院に行ったときには、すでに神経に達するほどの虫歯になっていたという例もあります。
毎回の歯科検診で撮影するわけではなく、虫歯チェックは半年に1回や、歯の本数や顎の大きさの確認といったように数年に1度全体のパノラマ写真というような撮影間隔ですので、安心して受けて頂ければと思います。
身体に良いと思っていた飲み物で虫歯になることがあるのをご存知でしたか?
みなさんと虫歯予防に関するホームケアのお話で盛り上がった後は、虫歯になりやすいのに意外と知らない「ドリンク」起因の虫歯についてお話ししました。
乳幼児期に多い「ボトルカリエス」
哺乳瓶やマグなどに牛乳やイオン飲料、野菜・くだもののジュースを常備して、日常的な水分補給にしている方はいらっしゃいませんか?牛乳もイオン飲料も、もちろん成分は身体を作ったり元気にするものもありますから、飲んではダメではありません。しかし常飲していると「歯」にとってはNG。酸の影響を受けて前歯の表面全体に多発した虫歯になりやすくなりますよ。
中高生に多い「ランパントカリエス」
短期間で広範囲に多発する虫歯をランパントカリエスといいます。
特に中高生は部活動で清涼飲料水やイオン飲料を常飲したり、塾や習い事が増える時期でもあり食事習慣が乱れがちになります。まだまだ自己管理できる年齢ではないため、気づいたら虫歯が増えていたという方は多いようなのです。
<飲み物の糖分>
イオン飲料やスポーツドリンクは発熱時や運動時に1ℓ位飲んでしまうことはあるでしょう。その中には60~120gもの大量の砂糖を摂っていることになります。
<飲み物の㏗>
また、スポーツドリンクやイオン飲料だけでなく、野菜やくだもののジュースも酸性が強いことは意外に知られていません。身体によいからとか、食べてくれないからせめてジュースで…と常飲しないようにしましょう。
脱水症や熱中症対策には手作りの「経口補水液」で!
そうそう!熱中症や脱水症状を予防するのであれば、水分は手作りできるってご存知ですか?
発熱時や炎天下での野外活動の際、脱水症や熱中症対策としてスポーツドリンクやイオン飲料を摂取することは、糖質過多・塩分過少になってしまいます。実は対策になっていないんです。 身体に良いとされる市販の経口補水液はありますが、それも表示をよく見てください。甘味を入れているものは体調が戻ったころに虫歯になってしまった!ということも起こり得るんです。
手作り経口補水液で虫歯も予防
以下の材料を混ぜ合わせるだけで簡単にできます!
➀水500ml
②ぶどう糖(顆粒)10g
③食塩 約1.5g(10円玉大で少し盛り上がる程度が目安)
④食品用重曹 約1g(10円玉程度)
⑤レモンかオレンジの絞り汁(お好みで)
※スポーツ時など発汗だけなら➀②③だけ、嘔吐・下痢があれば④⑤もあった方がよい
※500ml(幼児なら300ml)を30分くらいかけてゆっくり飲むのがコツです
あくまでも脱水・熱中症対策時にしましょう
手作り経口補水液は安価な材料を常備しておくだけですぐに作ることができます。それぞれをストックしておけば急な発熱時で買い物に行けなくても、水分だけはすぐに作ることができるので便利です。
また、あくまでも脱水・熱中症対策の飲み物です。お茶や水を飲まないお子さんの日常的な水分補給水にはしないでくださいね。
参考:「スポーツドリンクと経口補水液を正しく理解しよう」大阪市学校保健研究大会誌
【歯科衛生士 江頭小百合より】