歯科医院へ歯並び相談に来られる患者さんは主に「歯並びの乱れ」を気にして相談に来られます。
もちろん、きちんと整った歯並びは素晴らしいです!
ですが、もっと大切なのは、お子さんが自身の成長を活用して歯並びを整えることができる身体づくり。そしてそれが全身の健康へとつながるとしたら…。
今回は、お子さんの歯並びを整えるために必要な「舌」の機能について詳しくお話したいと思います。
舌と呼吸との関係
呼吸は鼻で自然に行うものです。
つまり意識的に鼻で呼吸するものではなく自然にできる機能として備わっています。
どうして自然にできるのか?
舌が上あごの正しい位置にあると、人間は鼻でしか呼吸できない構造になっています。
つまり、鼻呼吸は舌が正しい機能を持っていることが大前提となり意識して行うものではないのです。 呼吸は舌だけではなく咽頭筋や、横隔膜筋、骨盤底筋など全身が関与しています。
正しい呼吸ができるようになるためには、身体づくりも大切です。
舌と正しい飲み込みとの関係
飲み込みは本来、舌の上に乗った食べ物や水を舌全体が上アゴに押し付けることで喉に送り込んで流していきます。つまり、舌だけが動き飲み込みを行っています。お子さんの場合は、この時の力が上あごを刺激することで、同時にあごの成長も促していきます。
舌が下がっていると…
舌に筋力がなかったり、上あごが狭く舌全体が上あごにつかない状態だと、代償的に口唇や頬、または全身の筋肉を使い、無理矢理に飲み込みをおこなわなければならなくなります。
飲み込み時の舌が正しく機能するかは、これも全身、特に足が床にしっかりと着き踏ん張れているかが重要です。ですから、舌だけでなく、全身の筋力がバランスよく育っていることが必要なのです。
睡眠にも関係しています
睡眠は脳への正しい酸素供給があって初めて、体や脳を休ませるものです。
また、睡眠時には成長や体を機能させるホルモンが分泌されます。
お子さんの場合、まずは良質な睡眠時間を9〜10時間を取れる環境作りが大切です。
舌が正しく機能しないと…
舌が下がっていると、睡眠時に舌が喉に落ち込み空気の通り道である気道を塞いでしまいます。
この状態では正しい睡眠が取れないため、成長ホルモンや抗利尿ホルモンの分泌が弱くなり、成長障害や夜尿症をひき起こす要因になってしまいます。
また、体や脳が休まらないため、日中眠くなったり、落ち着きがなかったり、いらいらしてしまったりすることの要因になったり、これらが影響して、学力の低下や肥満にもつながります。
また、良質な睡眠がとれていないことでADHDと誤った診断を受けることも多くなってきています。
まとめ
普段何気なく存在している「舌」ですが、食事や発音の補助をおこなうだけでなく、身体のさまざまな機能や健康維持にとても大切な器官であること、お解りいただけたでしょうか?
お口の不具合(虫歯や悪い歯並び)をポイント的に治療することもできますが、お子さんの将来を考えると、お口に関係する筋機能を育てることがとても重要だと考えられます。
その中でも「舌」はさまざまな働きや体と関係する要素も多い器官です。 矯正治療をお考えの際には、ぜひ筋機能育成も取り組んでいただきたいと思います。