今回は「お口の清掃補助具」にスポットを当ててみたいとおもいます。
なぜ清掃補助具は必要なのかということや、どんなものを選んだらよいのか。
また、使用方法などもご紹介しますので、参考にご覧ください。
「歯を磨くための「補助的な清掃用具」を使いましょう!
1.しっかり歯みがきしていても虫歯や歯周病になってしまうのはなぜ?
みなさんは虫歯予防や歯周病予防のために、日々歯磨きされていることでしょう。
食事をするとお口の中が食物残渣で汚れてしまったり、時間が経つとお口の常在菌が出す酸によって「歯垢(しこう)」が作られて歯が虫歯になります。 お口の中の汚れは、どんなに頑張って食後3回しっかり歯磨きしても、歯ブラシのみの清掃では全体の約60%程度の清掃効果だとされています。そこで補助グッズを併用すると、清掃効果が80%~90%近くに上昇するといわれているのです!
食後におこなう歯磨きはお口を清潔に保ち、虫歯・歯周病を予防するための対策としてもっとも有効的な方法として周知されていますが、歯ブラシによる清掃だけでは不十分であるということは実はあまり知られていないんですね。
2.なぜ歯ブラシでおこなう歯磨きだけではダメなの?
みなさんは洗い物をする時、お水ですすぐだけでしょうか。
きっとほとんどの方は、食器洗剤をスポンジにつけて磨くでしょうし、細長い水筒などの届かない部分は、柄のついた細いブラシを使いますよね?
「歯」も同じで、汚れは見えている表面部分にだけ付くのではありません。
歯は前歯や奥歯とさまざまな形の歯が並んでいますよね。また、歯と歯の接面や奥歯の複雑な噛み合わせ、歯と歯茎の境目、歯並びが悪い部分など、歯ブラシの毛先が届きにくい部分もたくさんあります。
見えにくい部分の汚れをいかに落とすことができるかということが、虫歯や歯周病の発症をさらに抑制することに繋がるのです!
3.歯ブラシでの清掃を補助するさまざまな道具
補助的な清掃用具にはデンタルフロス、歯間ブラシ、ワンタクトブラシ、インタースペースブラシなどがあります。
デンタルフロスは歯と歯が接している部分(隣接面といいます)に糸を通すことで、歯ブラシの毛先が届かない接面の食べかすや歯垢を落とす道具です。
歯間ブラシは、歯と歯茎間の食べかすや歯垢を落とすための道具で、1本の針金に対して横に毛が付いた形状のブラシです。
ワンタフトブラシやインタースペースブラシは、歯と歯の間や歯周ポケット部をピンポイントに磨くブラシで、孤立した歯や凸凹のある部分に効果的です。
また、矯正治療中に招請装置周辺の清掃しにくい部分を磨くのにも用いられています。
次はそれぞれの道具について、細かくご紹介していきましょう。
歯と歯の間のお掃除道具「デンタルフロス」
1.デンタルフロスを使用することで得られる効果とは?
歯ブラシで歯みがきする場合、毛先が当たるのは歯の表面がほとんどです。 そこで、歯と歯が接している部分や凸凹していて毛先が届きにくい部分などは、汚れの磨き残しが起こりやすく、虫歯になりやすい場所のひとつでもあります。
歯と歯の接面にフロスを通すことにより、歯垢除去効率が60%から80%以上に上がるといわれており、歯ブラシだけで歯磨きする場合に比べて、歯垢除去効率が確実にアップします!
特に奥歯は前歯に比べて接面が広く、奥の方であるため磨きにくいこともあり、虫歯や歯周病になりやすいため、普段の歯磨きにフロスも併用するのがおすすめです。
2.お掃除以外にもこんなメリットが…
また、歯と歯の間に「隠れ虫歯」ができている場合、フロスを通した時に引っかかることによって発見されることもあります。
目視で確認するのが難しく、見えない部分なためいつの間にか進行してしまう虫歯ですが、日常的にフロスを取り入れた清掃をしていることによって虫歯が早期のうちに気付くきっかけにもなり得るのです。
3.使用に関しての注意点
清掃効果を高めてくれるデンタルフロスですが、正しい使い方を身につけて使用する必要があります。
たとえば、糸の通し方を誤ると歯茎を傷つけてしまうこともありますし、指に巻き付ける方法や糸の動かし方、糸の長さなども効率的にお掃除できるかのポイントになります。
また、隙間のある部分や歯並びが悪い部分には糸を通しても効果が得られないこともあります。
使用の際には正しい使用方法を身につけてからホームケアに取り入れていただきたいと思います。使い方を指導してくれたり、上手に使えているかチェックしてもらえるような、相談のできるかかりつけ歯科医院があると心強いですね。
4.デンタルフロスを使った清掃方法
デンタルフロスを使用するには、糸を適度な長さにカットして指に巻き付け、自分の指を動かしながら清掃する方法と、専用ホルダーに糸をカットしたものを装着して、ホルダーをお口に挿入して清掃する方法があります。
中にはホルダーに糸が付いた使い捨てタイプのものもあります。
5.ロールタイプのデンタルフロスの基本的な使用方法
はじめに、必要な長さの糸を切り出します。両手の指に巻き付けてお口の中に挿入しやすい長さが望ましいです。
両手の人差し指に糸を巻き付け、親指で押さえて長さや角度を調節します。歯と歯の間に当てたら、ノコギリを引くような要領でゆっくりと下へおろします。歯の接面は両方の歯に沿わせて、同じ場所に2回通しましょう。 指の操作によって角度が変えやすいので、歯と歯の間が狭い人や矯正中の人におすすめです。
6.ホルダータイプのデンタルフロスの基本的な使用方法
次はホルダーに糸をセットして使用するタイプのデンタルフロスです。
こちらはホルダーを握ってお口に挿入して使用しますので、操作がしやすく初めてフロスを使う人やロールタイプの操作が苦手という方にも気軽にお使いいただけます。
歯と歯の間に通す際には、ロールタイプと同じようにノコギリを引くようにゆっくりおろしますが、糸の角度が変えにくいため面に沿わせて下ろすのが難しいのが欠点です。
歯並びが凸凹している人や矯正中の方には使いにくいかもしれませんね。
歯と歯のすき間のお掃除に最適!「歯間ブラシ」
1.歯と歯のすき間汚れに効果的な歯間ブラシ
通常の歯磨きも併用して歯間ブラシも取り入れることにより、60%の成功効率だったものを90%近い成功効率にするといわれています。
歯ブラシの毛先だけでは取り除けない隙間の汚れを落とすため、先が針金で曲がりやすく隙間の両側の汚れに対応できるような毛先の歯間ブラシを挿入して汚れを掻き出すことにより、歯と歯の間の隙間や歯と歯ぐきの境目などに溜まった汚れを落とすのです。
他にも、失った歯の両側の歯と連結したブリッジという装置を入れている方の人工歯との連結部分や、歯列矯正中の一時期歯に隙間が生じている部分などの清掃にも効果的ですのでおすすめです。
2.歯周病治療にも役立つブラシ
歯間ブラシはもともと歯周病の治療器具として開発された清掃補助具です。
歯周病や加齢に伴ってできた歯と歯茎の隙間に、食べかすや歯垢が溜まりやすくなることから歯周病の大きな原因のひとつとなってしまいます。
そこで歯肉が炎症を起こしている場合、歯垢が除去されれば歯肉の腫れも治まってきますし、過去に歯周病に罹った方や歯茎が下がってしまった方の歯周組織を維持して再発防止のためにも効果的です。
3.ブラシの大きさの選択に注意しましょう!
歯間ブラシには、お口の健康状態や隙間の大きさによって適切なブラシが変わります。
適切な形状やサイズのものを使用しないと歯や歯茎を傷つけてしまうこともありますので、歯科医師の診断を受けて歯科衛生士による指導を受けて、適切な使用方法を身につけておこなうようにしましょう。
4.歯間ブラシはサイズ選びが重要
自身の歯の隙間に合ったサイズを選ばないと効率的に汚れを落とすことができません。まずは清掃方法よりも歯間ブラシのサイズ選びがとても重要です。
サイズは、4S,3S,SS,S,M,Lサイズの6段階のものが多く、大きいものではLL,3L,4Lまであり、隙間に合わせて選択します。(健康な歯茎で0.5㎜程度の4Sサイズといわれています) ホルダーの形状もI字型とL字型があり、使用箇所によって使い分けます。
5.基本的な歯間ブラシの使い方
歯の表面側の隙間からブラシをゆっくり優しく挿入し、できるだけ歯茎の方に優しく押し下げ、歯茎に当たらない程度に数回左右にブラシを動かします。
前歯はI字・L字共に使いやすい方で大丈夫ですが、奥歯は頬っぺた側から入れるのが難しいため、L字型のホルダーが望ましいでしょう。
6.使用に関する注意点
一番小さい4Sサイズのブラシでも入らない隙間に無理矢理いれてしまうと、歯と歯の間のすき間が余計に広がってしまったり、ブラシで歯茎を傷つけてしまう原因にもなりかねません。
隙間が広がってしまうと、逆に汚れが残りやすくなってしまい虫歯や歯周病のリスクを高めてしまいます。 また、隙間の広い部分に細すぎるサイズのブラシを使っても磨き残してしまいます。
ブラシは隙間の大きさにきちんと合ったサイズで、清掃しやすい形状のホルダーを選ぶようにしましょう。ドラッグストア等で市販品も購入できますが、初めて使用する場合には歯科医院で適切なサイズを確認してもらうことをおすすめします。
ピンポイントでお掃除できる「ワンタフトブラシ」
1.「ワンタフトブラシ」って何?
このブラシは「ONE=ひとつ」「TUFT=毛束」が語源で、筆先のように毛束がひとつで先細の形状をしたものが先端についたブラシです。 (「インタースペースブラシ」と呼ばれることもあります)
通常の歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシを使用しても磨き残してしまうような部位にピンポイントに当てることができ、的確に汚れを落とすための清掃補助具なのです。
2.どんな場所に使用するの?
歯は1本1本が丸みのがあります。歯ブラシの毛先は歯の凸面には適していますが、隅角部分や凹面のような凹面はなかなか当たらないものです。
そこで、ワンタフトブラシのように凹面に適した歯ブラシを取り入れることで、磨き残しやすい歯並びが悪く重なった部分や歯と歯の間の凹んだ部分を磨くことができます。
また、矯正装置の装着されている部分やワイヤーの下、連結した装置であるブリッジの下など、毛先が届きにくい部分にも非常に効果的です。
3.ワンタフトブラシの使用方法
まずは把持部(ハンドル)を鉛筆を持つようにして持ちましょう。(ペングリップといいます)こうすることで余計な力が入らず毛先をスムーズに動かすことができます。
そして汚れが残りやすい凹面である歯と歯茎の境目や前歯の裏側のくぼみをなぞるように優しく動かします。 ゴシゴシと動かすのではなく「なぞるように優しく」がポイントです。
清掃補助具に関するQ&A
1.清掃補助具はいつ使うのが最適ですか?
使い方は人それぞれですが、敷いていえばまず最初は普通の歯ブラシで歯全体を磨きます。 ここでまずは表面の汚れをしっかり落としましょう。
その後、歯ブラシで落としきれなかった汚れを補助具で落とすという順番がよいとおもいます。 毎回の歯磨きに導入するのは大変ですから、もし1日1回されるのであれば就寝前の歯磨きで取り入れるのをおすすめします。
どの補助具を使うかどうかは先にご紹介したように必要なものとそうでないものもありますので、ご自身のお口の状態や歯並びに合わせて最適なものを選んでくださいね。
2.清掃補助具も歯ブラシのように繰り返し使用できますか?
歯間ブラシやワンタフトブラシはある程度繰り返し使用することができます。
もちろんしっかりと洗浄し、乾燥して保管していただき、清潔に保っていただきたいと思います。
デンタルフロスは、切れない場合繰り返し使用される方もいらっしゃるようですが、糸の繊維に汚れや細菌が残っている場合もありますし、ほつれが出た場合は清掃効果が落ちてしまいます。
一度カットした糸は保存も難しいですし、衛生面を考えるとその都度交換していただいたほうがよいと思います。
3.子供にも使用できますか?
デンタルフロスとワンタフトブラシは使用できます。
デンタルフロスは歯と歯の間のお掃除に効果的ですので是非取り入れていただきたい清掃補助具です。
歯と歯の接面を磨くためのものですので、特別に「子供用」というものはありません。
中には、お子さん向けで糸にフレーバーのついたものもあります。
お口が小さく保護者の方の手が入りにくい場合も多いので、ホルダーを利用されると使いやすいでしょう。 子供用品を取り扱う販売店等に子供用のホルダーや使い捨てタイプが販売もされています。
歯間ブラシは隙間がある場合の補助具であり、無理に使うと歯と歯の間のすき間を作ってしまう原因になっていしまいますのでお子さんには不向きです。
4.歯磨き粉は必要ですか?
歯磨き粉も「清掃補助具」のひとつだということをご存知でしたか?
歯磨き粉自体には汚れを落とす効果はなく、歯ブラシと一緒に使用することで汚れを落としやすくしたりお口に爽快感を与えてくれたりします。
必ずしも必要というわけではありませんし、特にお子さんの場合は歯磨き粉で泡立ってしまうと磨きにくかったりすぐに辞めたくなったりすることが多いため、使用しないほうが磨きやすいということも考えられます。 特に、フロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシで清掃する際には使用しなくてもよいでしょう。
まとめ
清掃補助具はあくまでも「補助」するものです。
基本は食後におこなう歯ブラシでの歯磨きが大切で、1日の汚れを持ち越さないようにしっかりと歯磨きすることから始めましょう。
そしてお子さんの奥歯が生え揃う年齢の頃になると、おやつが増えたり幼稚園や保育園に通うようになるなどの環境変化も伴い虫歯になりやすい時期でもあります。
補助具を使った歯磨きに対して協力的にできるようになったら是非歯磨きに取り入れてくださいね。 幼いころから清掃補助具を取り入れることで、歯磨きの清掃効率をアップさせることはもちろん、虫歯や歯周病予防が意識できる健康志向の高い大人になるステップにもなりなすよ♪