こんにちは!
418編集部 歯科衛生士の江頭です。
今回は公民館の育児サークル等で行っている「お口のお話会」で、0歳児〜3歳児くらいのお子さんの子育て中のママからよくいただく
「歯並びが悪くなりそうで不安」
というお悩みについてお話したいと思います。
例えば、まだ乳歯列、離乳食中といったお子さんでも「歯並び」を気にするママが本当に増えてきたなと感じています。
実は赤ちゃんの頃から、すでに永久歯の歯並びがどうなるのか「兆し」もあるんです。
ぜひ、仕上げ磨きの時にでも、お子さんのお口をよーく観察してみてくださいね。
永久歯の歯並びは「生まれてすぐ」から作られ始めます
歯並びの形成はいつから始まるのでしょうか?実は、生まれてすぐから始まります。そして、子どもの健康な歯並びは、将来のお口の健康や身体の健康にも大きな影響を与えます。
まず、乳児期から始まる歯並びの形成プロセスと、その重要性について詳しく見ていきます。
歯並びの基盤を作る
赤ちゃんは生後すぐ、既に歯茎の中には乳歯の元となる歯胚(しはい)が存在しています。これら歯胚は、妊娠6週目頃から形成が始まり、生後約6ヶ月から1年の間に乳歯として口の中に出てきます。この乳歯の出現と配置は、将来の歯並びに大きな影響を与えます。
また、母乳を吸う運動から始まり、お口の機能の成長に合わせた離乳食を進めていくことによって、顎の成長を促し、丸く整った※歯列弓(しれつきゅう)を形成することが、将来永久歯を綺麗に並べるためにとても重要です。
※歯列弓:歯が並ぶ顎の骨の構造のこと
乳歯の役割と重要性
乳歯は「一時的なもの」と考えがちですが、以下のような重要な役割を果たします。
- 噛む機能:食べ物をしっかりと噛み砕くことで、消化を助けます。
- 発音の補助:言葉の発音に影響を与え、正しい発音を学ぶ手助けをします。
- 顎の成長誘導:顎の正しい成長を促します。
- 永久歯の位置ガイド:乳歯は後に生えてくる永久歯の位置を決めるガイド役を果たします。
虫歯になっても「どうせ永久歯に生え変わるから」と放っておくと、重要な役割を失い、永久歯が健康で正しい位置に生えることができなくなる要因になる可能性があります。
歯並びが悪くなるかもしれない「兆し」とは?
乳幼児の時期からでも、永久歯の歯並びが悪くなるかもしれない予測が立つことがあります。それはいくつかの「兆し」がみられるからです。
小児の口腔機能育成を研究している歯科医師の見解や、小児歯科で10年間0歳児からお口の成長を見てきた私の経験を踏まえて、その兆しについて以下に詳しく解説します。
乳歯列が隙間なく並んでいる
乳歯は隙間ができるくらいの生え方がちょうど良いと考えられていますが、最近は乳歯がしっかり隙間なく並んでいるお子さんが増えています。中には、乳歯列の時から重なりがあるお子さんもいます。その場合、永久歯は高確率でスペース不足が起こり、前後に重なったり八重歯になるなど歯並びが悪くなることが予測できます。
指しゃぶりや舌の癖
3歳を過ぎても指しゃぶりや舌を前に突き出す癖が続くと、歯並びや噛み合わせに影響を与えるリスクが高くなります。適切なタイミングでこれらの習癖をやめるように促し、なかなか辞められない時は必要に応じて専門家にも相談してみましょう。
早期の乳歯の脱落
乳歯が通常の時期よりも早く抜けると、周囲の歯がその空間に移動し、歯並びが乱れる原因となります。乳歯が早期に抜けた場合は、歯科医に相談し、スペースメンテナーなどの装置を使って空間を確保した方が良い場合があります。
顎の成長の異常
顎の成長が不均衡である場合、上下の歯の噛み合わせに問題が生じることがあります。また、顎が狭くU字やV字歯列弓になっている場合は、永久歯になった時に綺麗に並びきれないことが予測できます。定期的な歯科検診で顎の成長をチェックし、必要に応じて小児矯正(口腔機能の成長を活用した矯正)を行います。
永久歯の生え方の異常
永久歯が斜めに生えたり、重なり合って生えたりする場合、歯並びに問題が生じる可能性があります。永久歯の生え方に異常が見られた場合は、早めに歯科医に相談して適切な治療計画を立てましょう。
口呼吸
口呼吸を続けると口周りの筋肉が弱くなります。そのため、上顎が狭くなり前歯が突出するなど、歯並びが悪くなる可能性高くなります。口呼吸の原因を突き止め、必要に応じて耳鼻科や歯科医に相談して治療を行った方が良い場合もあります。
食事や発音の問題
食べ物をうまく噛めなかったり、特定の音を発音しづらかったりする場合、歯並びに問題がある可能性があります。こうした問題が見られる場合は、歯科医に相談して原因を特定し、早めに適切な対策や治療計画を立てることが必要になることもあります。
乳幼児期から始められる綺麗な歯並びのための口腔ケア
生まれてすぐの時期から始まる口腔ケアは、将来の歯並びに大きな影響を与えます。以下のポイントを押さえることで、健康で綺麗な歯並びに近づくことができます。
母乳・ミルクの与え方
母乳やミルクの与え方によっても、顎の発育や歯並びに影響を与えます。上顎と舌を使ってしっかり吸えるように、適切な授乳姿勢を心がけましょう。哺乳瓶で授乳している赤ちゃんは、適切な大きさ・硬さの乳首を選びましょう。楽に吸える乳首は、顎や舌への刺激が少なすぎる可能性もあります。
早期の歯磨き習慣
最初の乳歯が生え始めたら、柔らかいガーゼや専用の歯ブラシで歯を清潔に保ちます。歯が生える前からお口腔内に触れていると、歯ブラシを嫌がらずスムーズに歯磨きを開始することができます。また、口腔内に触れてたくさんの「刺激」を与えてあげることも、お口の成長にはとても重要です。
口腔習癖のチェック
指しゃぶりや舌の位置などの口腔習癖は、歯並びに影響を与えることがあります。口腔習癖にも意識を向けながら授乳や歯磨きをしてあげていると、お口の癖にも気づきやすくなります。気になることがあったら、必要に応じて専門家に相談しましょう。
成長段階に合わせた離乳食
口腔機能の成長には個人差があり、「何ヶ月だからこの硬さ」と育児書通りに進むわけではありません。口腔機能の成長に合わせて離乳食の段階を進めていきましょう。段階を進めてもあまり食べられないお子さんは、一つ前の段階に戻して、食べられるようになってから次のステップへ進めるようにしましょう。
小児矯正すると永久歯を矯正しなくて済むこともあります
もし、これまでお話したことを頑張っていたとしても、歯並びが悪くなってしまうことはあります。
私の娘も、0歳の頃から口腔ケアに力を入れていたにも関わらず、舌の位置が低く、顎が狭くなり、永久歯の歯並びがあまりよくありません。5歳から小児矯正取り組みましたが、結果、10歳から小児矯正2期治療を開始しました。
「歯並びが良くなるかわからないのに小児矯正する意味あるの?」と思う方もいるかもしれませんが、意味はあります!顎の成長が続いている間に行う小児矯正は、歯の誘導だけでなく口腔機能育成や習癖の改善も併せて行うことができるからです。
もしも小児矯正をしたのに永久歯の歯並びが綺麗にならなくても、小児矯正をせずに永久歯から歯列矯正する場合と比べて、さまざまなメリットがあります。
小児矯正は口腔機能育成が中心
小児矯正は歯並びを整えるのではなく、顎の成長を促す装置を使うことで、永久歯が自然と正しい位置に生えるように顎に整える「咬合誘導」という治療です。小児矯正の装置の中には、3歳頃から始められるものもあります。「顎の成長が弱いかな?」「舌の癖が気になるな」と感じたら、早めに咬合誘導を始めるのも良いでしょう。
小児矯正だけで済むこともある
小児矯正で顎の成長がスムーズに進めば、永久歯を矯正装置で動かす必要がなく小児矯正だけで終わるケースもあります。そうなれば矯正治療期間も短く、痛い思いもせず、結果的に費用も抑えることができます。
永久歯の矯正治療が軽度で済む
一昔前の歯列矯正というと、顎の成長の完了と永久歯列になるまで待ってから始めていました。しかし最近は顎の成長をむしろ活用して小児矯正を行うスタイルが増えてきています。小児矯正をしたのに歯並びが綺麗にならなかったというケースも確かにありますが、永久歯列になるまで待ってから動的な歯列矯正を始めるよりも、歯を動かす距離が短くてすむことや、顎の変形も大きくないので、2期治療は比較的短く終わる傾向にあります。
小児矯正は悪習癖の改善もできる
歯並びが綺麗になっても、歯並びが悪くなった原因がそのままでは後戻りをしてしまいます。小児矯正は口呼吸や舌癖を改善する効果も期待できますので、治療後の後戻りリスクも軽減できます。
まとめ
歯並びは生まれてすぐから形成が始まり、口腔機能の発育が整った歯並びの鍵を握ります。適切な授乳、早期の歯磨き習慣、口呼吸の改善、定期的な歯科検診などを通じて、矯正治療に頼らない健康な歯並びを目指すことができます。
保護者のみなさんが日常生活の中でこれらのポイントを意識し、早期から子どもの口腔ケアを行うことで、将来歯列矯正をする必要のない綺麗な永久歯列を手にいれるためのヒントになれば幸いです。