歯ならびが悪いことが原因で身体に与える影響はありますか?
全身にさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。
虫歯や歯周病のリスクが高くなる
歯並びが悪く重なっている部分や凸凹している部分は、歯ブラシが当たりにくく磨き残しになりがちです。 残ってしまった汚れは、細菌の塊「歯垢(プラーク)」といい、虫歯や歯周病の原因になってしまいます。
発音しにくくなる
歯と歯の間にすき間があったり、上下の歯列がしっかり噛み合わせていないと、舌の動きが制限されてしまったり空気がもれて発音しにくくなります。 サ行やタ行が話しづらくなったり、聞く方側も聞き取りにくく「活舌が悪い」といわれてしまったりすることもあります。
うまく噛めない
食べ物を前歯で噛み切ることや、奥歯でしっかりと噛んですりつぶして飲み込むという動きが正しくできない場合があります。
噛めないと唾液の分泌が不足してしまい、さらに食物を分解することがないまま飲み込むことになってしまいます。
そうなると胃や腸の負担が大きくなり、消化不良を起こすこともあります。 また、どうしても噛む回数が少なくなってしまうため脳への刺激も少ないと集中力や運動能力の発達に影響があるともいわれています。
顎に負担がかかる
噛む力が全体的にバランスよく分散されないため、一部分だけに強く負担がかかることがあります。そして顎の関節にも負担が大きくなり、顎関節症を引き起こす原因にもなり得ます。口が開けにくくなったり痛んだり、顎がカクカクと音がするなどの症状が現れることがあります。顎関節にとどまらず、頭痛・腰痛・肩こり・めまいなど、全身的な影響を誘因することもあります。
顔貌の変化
歯並びは口元の形に大きく影響します。口元が飛び出てしまったり、口元に締まりがなくなってしまうなど「見た目」にも大きく影響してしまいます。 また、歯列にズレがある場合は顔の左右に歪みがでてしまったり、顔貌全体的な印象として歪んで見えてしまうのです。
見た目のコンプレックスから、心因的ストレスを抱えてしまうこともあります。
永久歯が入り組んで生えてきました。隣の乳歯を削ったり、早めに抜いて並ぶようにする…ということはできないの?
さらに歯並びを悪くする可能性があるため、削ったり抜いたりすることはできません。
「なぜ永久歯が入り組んで生えてきてしまうのか」ということを考えてみましょう。
本来は顎の成長と共に歯が並ぶスペースを生み出し、そこにスムーズな乳歯と永久歯の交換が行われるのが理想です。 しかし最近のお子様はさまざまな生活環境によって口腔育成がスムーズにいかず、歯が入り組んで生えてしまうことが多い傾向にあります。 そこで隣の抜ける前の乳歯を削ってスペースを確保しても、削った歯の対象である歯の生えるスペースが広がるわけではありませんので、次の歯もまたスペース不足による生え方を生んでしまいます。
早めに抜歯してしまうのはもっと危険です。
永久歯は乳歯の根っこを目標にして萌出のために上がってきます。ですからまだ生える時期でない永久歯の上の乳歯が無くなれば、歯茎の中に控えている永久歯は道しるべを失うことになってしまうのです。 また、早めに抜いた歯の部分はすぐに永久歯が出てきません。一定期間スペースが空いた状態が続くと、その部分を埋めようと両隣の歯が寄ったり傾いてしまったりします。 道しるべもスペースも失ってしまった部分の永久歯は、本来生える場所ではない部分に生えてくるなど、さらに歯並びを悪化させる要因になりかねないのです。
歯並びが悪い状態で矯正をしなくても治ることはある?
歯並びの悪さの度合いにもよりますが、方法によっては矯正しなくても改善が見られることもあります。
歯は生えた場所が常に定位置と決まったわけではなく、さまざまな要素で動く可能性があります。
その特性を活かし矯正器具の力を利用して、歯を正しい位置に導くのが「歯列矯正」です。 では、歯並びが悪い状態の場合は、道具の力を借りなければ歯は正しい位置に誘導することができないのでしょうか?
歯並びの悪さの度合いが「骨格性」の原因が強い場合は難しいことが多いのですが、スペースが不足していることで並びきれていないというような「口腔機能の育成不足」によるものの場合、お口周辺の筋機能や舌の筋機能を向上させることで歯並びを正しい位置に導くことができます。
口腔機能が向上すれば歯が並ぶ顎が発達してスペースが生まれ、頬の筋肉や舌の筋肉に押されることで自然に凸凹が改善されることもあります。
お口に影響を与えてしまうような癖(指しゃぶりや口呼吸など)を改善することで悪い歯並びになりやすい因子を取り除くことも大切です。
ただし、口腔機能は本来、成長と共に必要な部分を必要なだけ自然におこなうことで徐々に形成されていくものです。
ですから、口腔機能育成に取り組み始める時期が遅ければ遅いほど改善される割合はすくなくなり、完全に正しい噛み合わせに導くことは難しいかも知れません。 ですが、生活習慣や悪習癖が改善されないままでは歯並びは悪いままですし、歯列矯正を始めたとしてもなかなか改善されなかったり、装置が外れた後の後戻りもしやすい環境でもあるといえます。 始めるのが遅くても手遅れということは全くありませんので、気づいたときから口腔機能を高める治療もぜひ取り組んでいただきたいと思います。
子供の前歯が斜めに生えてきたけど大丈夫?
実は子供の歯は斜めに生えてくる傾向にありますので、生え始めは斜めでも心配ありません。
子どもの歯から大人の歯へ交換が始まるのは約6歳~7歳頃です。 まだまだお顔も小さく幼いころから、一生共にすることになる大きな大人の歯に交換が始まるのですから、最初からきれいに並んでいくことは難しい場合がほとんどです。
最初は隣の歯と重なってしまった部分があったり、ちょっと斜めに隣の歯を避けて生えてきてしまうこともあります。
特に上の前歯に関しては下の歯よりも顕著に八の字で生えてくることが多く、上の真ん中の前歯の真ん中が空いて斜めに生えてきてビックリされる方も多いようです。
これらの不具合は、年齢を重ねるごとに徐々に顎が成長してスペースが広がることでだんだんと解消されたり、隣の歯が生えてきて横から押すことで八の字だった歯がまっすぐに整えられてくるというプロセスを経て整ってくるようになっています。
しかしこれらのプロセスはあくまでもお口の機能が正常に育成されている場合に整うのです。 お口周辺の筋機能が発達し、舌の筋力がしっかり育って上あごに常に引き上げられた状態で安定し、しっかりとお口を閉じて鼻で呼吸ができる。
このように「口腔機能」がしっかりと育っていれば、斜めに生えてきた歯も頬の筋力や舌の筋力で押されてしっかりと正常な位置に導かれるのです。
生え始めの歯が斜めに生えてきたからといってすぐに何らかの対処が必要というわけではありませんので大丈夫といえます。しかし顎の成長がある程度完了し、奥歯もしっかりと永久歯が生え揃ってくる12歳前後になっても歯が斜めのままであれば、歯科医院で矯正が必要かどうか等の精査を受けられることをおすすめします。