シーラントとはどんな予防ですか?
シーラント予防とは、歯の溝に特化して虫歯予防するお薬のことです。
まずはシーラント予防がどんな予防なのかということを掘り下げるために、「なぜ溝だけを予防する必要があるのか」ということを考えてみましょう。
虫歯はできやすい場所が3か所あります。歯と歯の間と歯と歯茎の境目、そして奥歯のかみ合わせの溝の3つです。歯と歯の間と歯と歯茎の境目は歯全体に言えることですが、奥歯のかみ合わせの溝だけ「奥歯」ならではの形状です。その深く切れ込んだ溝が、歯ブラシの毛先が届きにくく虫歯になりやすい部分というわけです。 歯と歯の間や歯と歯茎の境目は、歯ブラシやデンタルフロスで歯垢を落とすことができますが、奥歯の溝は毛先の太さよりも狭く、入り込んだ食べかすや歯垢(プラーク)を磨き残してしまいがちです。そしてそこから虫歯が進行してしまいます。
そこで深く切れ込んだ奥歯の溝に「シーラント」というお薬を流しこみます。このお薬は最初は液状で深い溝にもしっかりと流れ込み、光を当てることで硬化し噛み合わせ面を滑らかにします。そうすることで、溝から始まり気づかないうちに進行してしまう虫歯を予防することができるのです。
シーラント予防は歯全体にはできないの?
シーラント予防はあくまでも「溝を浅くする」予防です。歯全体をコーティングすることはできません。
シーラント予防の虫歯予防効果は高く、一度シーラント予防をして浅くした溝はシーラントで保護されている限り約90%近い虫歯予防効果があるといわれています。
「そんなに保護効果が高いお薬なら、歯全体をコーティングできないの?」といわれる方もいますがそれはできません。
まず、なぜ溝の深い部分だけに流し込んでシーラント予防をするのかというと、奥歯のかみ合わせは形状が複雑な形をしていて、上下の歯がしっかりと噛み合うようになっています。その噛み合わせ全体にシーラントを入れてしまえば、噛み合わせの高さが変わってしまいます。噛み合わせは、数ミリの紙一枚挟まっても違和感を覚えるほど敏感ですし、わずかな高さの変化でも歯並びや噛み合わせにズレが生じてしまうのです。 また、シーラントには銀歯のような強度もないため、たとえば歯全体に塗って硬化させてみたとしても、人間の咬合力の強さは約60㎏以上かかるといわれており、すぐに剥がれてしまうでしょう。
シーラントの対象歯を教えてください
シーラント予防は奥歯の溝におこないますが、他にも特殊な溝がある場合にもおこないます。
シーラント予防は歯ブラシの毛先が届かないほどに細く切れ込んでいる溝を浅くすることで溝に食べかすや歯垢が侵入しないようにするための予防薬です。保護する部分が「溝」ですから、対象歯は主に「奥歯の溝」ということになります。乳歯は第一乳臼歯と第二乳臼歯で上下左右合わせて8本、永久歯は第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯(6歳臼歯)、第二大臼歯の16本です。「親知らず」と呼ばれる第三大臼歯は形や生え方がさまざまですので、シーラントができる溝があり必要であるかは医師の判断によって行われることもあります。
他にも、前歯の裏のくぼみが深い形状の場合や、奥歯の側面の溝が深い場合。また「癒合歯」といって2本の歯が癒着した形状で生えてきている場合、歯と歯の間がデンタルフロスで清掃できませんので、歯と歯の間のくぼみにシーラント予防することもあります。
ご紹介した対象はあくまで目安で、使用することで虫歯予防につながる部分かどうかは歯科医師の判断になります。もしも気になる部分があれば、予防可能かどうか歯科医院で確認してみるのもよいでしょう。
フッ素とシーラントとどちらが良いですか?
どちらも虫歯予防には良いお薬です。
フッ素とシーラントは虫歯予防の作用が違うため、どちらが良いという比較はできません。
フッ素は、歯の表面に作用することで、虫歯を予防するために3つの作用が働きます。
1つ目は「歯質の強化」です。
歯の表層が酸によって溶けにくい性質にしてくれます。特に生えてすぐの歯は構造が粗造で弱く軟らかいので効果があります。
2つ目は「再石灰化の促進」です。
食事をするとお口の中は中性から酸性に傾き、歯の表層からカルシウムやリンが溶け出します。通常唾液の作用により修復されますが、追い付かず脱灰を繰り返すと虫歯になってしまいます。フッ素は溶けだしたカルシウムやリンの再石灰化を促進してくれる作用があります。
3つ目は「酸産生の抑制」です。
歯磨きで落としきれなかった歯垢(プラーク)は酸を発生して付着した部分を脱灰させる原因になります。フッ素が虫歯の原因菌の働きを弱め、発生する酸の量を抑制する働きも持っています。
シーラント予防は、歯ブラシの毛先が届かないほど細く深く切れ込んでいる溝をお薬で浅くすることで、溝に残る食べかすや歯垢が原因で虫歯が発生するのを予防します。
溝のみに特化した予防で全体を保護するお薬ではありません。 「虫歯予防法としてどちらかを選択する」という考え方ではなく、フッ素とシーラント予防両方を併用したほうが、より効果アップにつながるでしょう。