こんにちは。都内のマウスピース矯正専門歯科に勤めてます歯科衛生士の船本と申します。
日々、矯正治療に携わる中で衛生士目線でみなさんのお役に立てる記事をお伝えしていきますのでよろしくお願いします。
ここ数年、様々なメディアやSNS、YouTube等で目にすることが増えたのが「マウスピース矯正」です。
また、未だに先のみえない新型コロナウイルスの感染対策に、マスクで口元を隠すことが増えたことで、この機会にと矯正治療を考えられるきっかけになっています。
マウスピース矯正の広がりを嬉しく感じる一方、情報が多く、どれが正しい情報なのか私自身も迷ってしまうことがあります。
特に、小児矯正で使用するマウスピースの情報が少ない気がしました。
そこで今回は、小児矯正で用いるマウスピースについてご紹介します。
マウスピース矯正をお子さんに検討されている親御さんが、矯正相談を受けられる前の参考にして頂けると幸いです。
小児矯正に使われるマウスピースは目的によって2つあります
「マウスピース矯正」は、小児の矯正治療では、大きく2つに分けられるのはご存知ですか?
「筋機能用のマウスピース」と「歯列矯正用のマウスピース」の2つです。
小児のお口の中は、乳歯列から混合歯列(乳歯と永久歯の生え変わりの時期)、永久歯列と成長して変化していきます。
以下の図を参考にご覧ください。
歯の生え変わりの流れと目安時期
0歳~5歳頃 | 6歳前後~12歳前後 | 12歳以降~ |
乳歯列期 | 混合歯列期 | 永久歯列期 |
乳歯だけの時期 | 乳歯と永久歯が混在する時期 | 永久歯が生え揃い終える時期 |
小児矯正をおこなう場合は、成長に合わせて装置が変わることがあります。
また、マウスピース矯正中も、成長に合わせてサイズ交換することもあります。
矯正相談時には、ぜひ装置の特徴を理解した上で受診なさってくださいね。
「歯列矯正用マウスピース」と「筋機能用のマウスピース」
先ほどもお話したように小児の矯正治療で使用するマウスピースは、大まかに2つに分かれます。
1つは「筋機能用マウスピース」もう1つが「歯列矯正用マウスピース」です。
それぞれの装置の特徴やどのような働きがあるかをお話ししていきます。ぜひ参考にされてくださいね。
筋機能用マウスピースってどんなもの?
- アンバランスになった口や顔の周りの筋肉を正しい使い方に改善する
- 口呼吸から鼻呼吸に改善する
- 正しい舌の位置に整える
など歯並びに影響が出ないように予防と改善をしていくマウスピース矯正装置です。
乳歯列の時期に歯と歯の間にある程度の隙間がないと、前歯が凸凹に生えたり、八重歯が目だって生えてきたりする可能性が出てきます。
また、小児の成長期は骨が柔らかく、口呼吸や舌を噛んだり出すなどの舌癖、頬杖、指しゃぶり、うつぶせ寝などの悪習癖と言われるさまざまな癖が長く残っていると歯並びにも影響があると言われます。
例えば、上下の歯が噛み合わない「開咬」は、舌で上下の歯を噛んだり・押し出したりすることで起こると言われています。
他には上あごが下あごよりも出ている「上顎前突」は、親指しゃぶりで起こると言われます。
このように日々の生活で無意識に行っている悪習癖という癖を「筋機能用マウスピース」をはめることで、少しずつ取り除いていきます。
そうすることで口や顔の周りの筋肉や舌が正しい位置に整い、成長過程の歯並び影響が出にくいよう予防していくことができます。
歯列矯正用マウスピースってどんなもの?
- 歯のねじれや凸凹の改善
- 歯と歯の隙間を閉じる
- 歯並びを綺麗に並べる
- 見た目の改善が出来る
マウスピース自体にも歯を動かす力が備わっているので、上あご下あごを大きく広げながら永久歯の生えるスペースを作り歯並びの改善も行うことが出来ます。
I期治療とⅡ期治療は矯正の目的が違います
小児の矯正では「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」と言われ、、治療の開始のタイミングで治療ゴールが異なります。
「Ⅰ期治療」は、本格矯正の準備期間と言われ、永久歯が正しい位置並ぶための補助を行う治療です。
顎の成長を促し、永久歯が本来必要な大きさに整え、お口の周辺の成長も助けます。
この治療を行い、永久歯の並ぶスペースが確保され永久歯が生え揃った時点できちんと並べば、本格的な矯正治療は必要ない場合もあります。
また、Ⅱ期治療の期間短縮など軽度の治療で終えることにもつながります。
一方、「Ⅱ期治療」は、I顎の成長がある程度落ち着き、永久歯が生え揃った時期から始める矯正治療です。主に歯並びをきれいに並べ、正しい位置の噛み合わせに整えることを目的としています。
小児マウスピース矯正の流れ
では次に、マウスピース矯正の流れについてお話ししていきましょう。
小児矯正は、矯正を始められるタイミングも大切なポイントとなります。
小児矯正は何歳から始められるのか
早いお子様ですと4、5歳頃から始められています。ですが、誰もが始められるわけではありません。
- 長期にわたる治療に耐えられる性格かどうか?
- 受験や就活など環境の変化ないかどうか?
- 親御さんや兄弟が協力的かどうか?
等も小児矯正の治療において大切になってきます。
まだ乳歯列で、筋機能の改善が望める場合には?
乳歯列の時期は、まだまだ筋機能が育つことで顎の成長が期待出来ます。
ですから、「筋機能用マウスピース」を使用して、口や顔の周りの筋肉のバランスを整えて、正しい使い方が出来る癖をつけてあげましょう。
この時期に使用できる受け口用のマウスピースもあり、改善することも可能といわれてます。
Ⅱ期治療が必要なくなることもあります
「筋機能用マウスピース」を使用して始められて、顎の成長と歯の生え変わり時に永久歯の生えそろうスペースが十分に出来た場合には、Ⅱ期治療に進まない場合もあります。
永久歯が生えそろっている場合にはⅡ期治療
すでに永久歯が生えそろっているお子様は、二期治療から矯正治療を行います。
ですので、成人と同じように、歯並びや噛み合わせ全体を整える目的の「歯列矯正用マウスピース」を使用していく可能性が高いでしょう。
まとめ
小児矯正で用いるマウスピースは、特徴と治療の目的によって使用する装置が異なります。
また、矯正をされるお子さんの性格や年齢・お口の中の状況によっても変わりますし、生活環境も矯正を始められるタイミングを決める大切なポイントです。
なぜなら、小児の矯正治療が身体の成長を利用して行っているからなんです。
そのため、必然的に成人に比べると治療期間が長くなり、変化に合わせた装置に変化していく必要があります。
実際に、お子さんで矯正を始めたけど治療期間が長く行かなくなってしまった子や転勤や引っ越しで通えなくなってしまった子が大人になって再治療されるという相談をうける事もあります。
お子さんに矯正をマウスピースで考えられている親御さんには、ぜひ、この記事を参考にして頂いて、矯正相談にいかれることをおすすめします。治療の目的によって使用する装置が異なります。