by 418編集部
毎年6月は「虫歯予防週間」があることから、1年を通じてお口のおはなし会を開催することが増える時期です。 その中で保護者の方から寄せられる質問の中で「歯磨き剤」について多く挙がります。 皆さん生活習慣の一部となっている歯磨きの中で何気なく付けて磨いているという方が殆どで、「そういえばいつから使うの?」とか「そもそも何で使うの?」ということをお子さんの歯磨きをするようになって改めて感じる方が多いのでしょう。 今回は「歯みがき剤」についての疑問でよく挙がる内容について解説します。皆さんのホームケアに少しでも役立ちますように…。
歯磨き剤ってどんなもの?つけて磨かないといけないの?
歯磨き剤の質問で多いのが「歯磨き剤ってそもそもつけないといけないんですか?」という疑問です。まずは歯磨き剤とはどういう役割で、歯磨きの際に必要なものであるのかとこいうとを解説します。
1.歯磨き剤とは?
歯を歯ブラシで磨く際に、虫歯予防や歯周病予防など、さまざまな効果を期待して使用する「清掃補助具」と分類されるものです。はじまりは粉状のものを水で練って使っていたことから「歯磨き粉」と言われていましたが、現在一般的にチューブに入っている練り歯磨きが多く出回っています。また、液体タイプも増えつつあり、「はみがき」や「歯磨き剤」と呼ばれるようになっています。
2.成分ごとの違い
歯磨き剤のパッケージには「化粧品」もしくは「医薬部外品」と記載されています。この違いは、歯磨き剤に配合する基本成分とされるものだけで構成されている場合は「化粧品」。基本成分プラス薬用成分が配合されている場合を「医薬部外品」として分類しています。 日本で市販されている歯磨き剤の約9割りが「医薬部外品」で、そのうち約8割が薬用成分のひとつとして「フッ素配合」となっています。
3.そもそもつける必要はあるの?
確かに、歯の食べかすや沈着した歯垢(プラーク)除去するのは歯ブラシであって、歯磨き剤自体が汚れを落とすわけではありません。そのため、歯磨き剤を付けなくてもお掃除は可能です。小さなお子さんであれば泡立ちで歯磨きがし辛くなったりすることもありますので、無理に付けなくてもよいでしょう。ただ、歯磨き剤に配合されている成分を活用し、お口の環境を整えたり虫歯や歯周病の予防などに活用するために目的をもって使うことは有効的でしょう。
4.子供にも必要ですか?
小さいお子さんであれば、無理に歯磨き剤を使う必要はありません。ですが、子供用は幼い時期の口腔環境に必要な成分を配合しています。たとえばフッ素の効果で歯の質を強化したりするために有効的な製品もあります。また、泡立ちがあまりしないようにしていたり、香料もお子さんの好むのもであったりと、歯磨きの意欲を高める工夫もありますので、一概に「使ってはダメ」というものでもありません。 使用開始のタイミングはお子さん生活環境や口腔環境によっても異なりますので、タイミングを見て導入していくか決めましょう。
歯磨き剤は目的によって使い分けましょう!
では次に、歯磨き剤の目的別に特徴をご紹介します。購入の際に「どんな目的で使うのか」に合わせて参考にされてくださいね。
「基本成分」と「薬用成分」別成分と効果
歯磨き剤の成分ごとの効果歯磨き剤には「基本成分」と「薬用成分」が表示されています。歯磨き剤によく使用されている成分とその効果をご紹介します。目的に合わせて効果的に選択することで、使わない場合よりも健康な歯や周辺組織を保つことにつながるので、ぜひ知っていただきたいと思います。
【基本成分】
・清掃剤(研磨剤)
成分:リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸、炭酸カルシウム 効果:歯垢(プラーク)や着色汚れ(ステイン)に作用して汚れを落としやすくする
・湿潤剤
成分:ソルビトール、グリセリン 効果:歯磨き剤に湿り気を与えて操作性をよくする
・発泡剤
成分:ラウリル硫酸ナトリウム 効果:泡立ちをよくする成分で、口内に歯磨き剤を広げて汚れを落としやすくする
・粘結剤
成分:カルボキシメチルセルロスナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン 効果:ペーストの歯磨き剤などの適度の粘性を与える成分
・香味剤
成分:サッカリンナトリウム、メントール、ミント系 効果:歯磨き剤に適度な香味をつけ、爽快感や使いやすさを図る
・保存料
成分:安息香酸ナトリウム 効果:歯磨き剤の変質を防ぐため
【薬用成分】
・虫歯予防効果
成分:フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム
・歯肉炎予防効果
成分:塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン
・歯周病予防効果
成分:塩化クロルヘキシジン、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β-グリチルリチン酸、ビタミンE、塩化ナトリウム
・歯垢を分解する効果
成分:デキストラナーゼ
・歯石の沈着予防効果
成分:ポリリン酸ナトリウム ・知覚過敏症対策 成分:乳酸アルミニウム、硝酸カリウム
・タバコのヤニを分解して落としやすくする
成分:ポリエチレングリコール
お子さんの歯磨きに使うとしたら…?
さまざまなお口への効果を考えると、大人にとっては効果的な使い方ができそうな歯磨き剤ですが、こどもが使うにはどうなのでしょうか?いつから使ったらいいのか、配合成分などは?と迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
1.歯磨き剤はいつから使うのがベスト?
歯磨き剤は離乳食などのように、月齢など特に「いつから始める」といった目安はありません。しいて言えば幼稚園に入園する時期とされる(3~4歳)頃でしょうか。 ご家庭で保護者の方がお世話されている時期は、食事の時間や食べさせるおやつの種類なども管理できます。しかし、手が離れる時間が増える頃にになるこの頃は、乳歯も生え揃う時期とも相まって虫歯発生率も上昇します。この時期に虫歯予防効果アップや、お子さんが自分で「歯磨きしたい!」という意欲を持ってもらうキッカケとして歯磨き剤を始めるタイミングにされるのも良いと思います。
2.こどもに有効的な歯磨き剤の成分は?
お子さんに歯磨き剤を使ってブラッシングをするのであれば、お口の環境に有効的な効果を与えてくれる成分が配合されたものを選んでいただきたいと思います。 たとえば虫歯予防効果のある成分として有名な「フッ素」。多くの歯磨き剤に配合されていますが、是非配合の濃度にも注目してください。お子さんの歯磨き剤であれば900ppm前後のものが濃度としては高めです。また、逆に研磨剤や発泡剤は無配合か低配合のものをおすすめします。
3.大人用で併用してはダメなの?
大人用の歯磨き粉には、虫歯予防だけでなくお口の悩みに合わせて配合成分を工夫している商品があります。フッ素配合量なども大人用では小さなお子さんには適さない商品もあります。また、研磨剤で薄い乳歯の歯面を傷つけてしまったり、発泡剤で泡立ち過ぎて上手く磨けないなどの不具合も生じやすくなります。こども用は分けて準備するようにしましょう。
【タイプ別】 歯磨き剤の使い方
歯磨き剤は性質の違いによって、若干使用方法が異なります。年齢に合わせて用法によっては使いやすいもの・使いにくいものも。ここでは性質ごとの基本的な使用方法をご紹介します。詳しい用法・容量は製品ごとの使用方法を参考にしてくださいね。
1.練り歯磨き
歯ブラシの先端に適量の練り歯みがきを乗せます。料の目安は小豆程度の豆粒大。先端にほんのちょっと。よくCM等で見るような、歯ブラシの毛全体に乗せるような乗せ方はNGです。お口の中に歯ブラシを入れたら1本ずつ丁寧に磨いていきましょう。
2.ジェル状歯磨き
練り歯磨き同様歯ブラシの毛先に適量を乗せ、歯ブラシで歯の表面全体に行き渡らせるように馴染ませてから1本づつ丁寧に磨いていきましょう。泡立ちが少なく磨きやすさが特徴です。
3.液体歯磨き
歯磨きをする前に適量を口に含み、ブクブクうがいをしてお口の中に成分を行き渡らせた後に液体は吐き出します。その後水でうがいはしないまま歯ブラシで歯を磨きます。ジェル状同様、泡立ちが無いので歯が見やすく磨きやすいです。
4.粉状歯磨き
歯ブラシに粉を直接付けて磨いていくものや、先に水と混ぜて練り、練り歯みがきのようにして使用するもの等があります。商品の用法を守って使用しましょう。
こどもにおすすめの歯磨き剤
各タイプの歯磨き剤ごとに、歯科衛生士目線でポイントをお伝えしながらおすすめの商品をいくつかご紹介します。
練り歯磨き剤:ライオン「Check up・ codomo(チェックアップ・コドモ)」
市販品の中でも、最大規定量に近い950ppmのフッ素を配合しています。フッ素の滞留性を高めた独自の処方が特徴で、歯質を強化したい方にはおすすめです。低研磨・低発泡・低香味と、こどもが迂回やすい工夫がされています。 (こちらの商品スタンダードな歯磨き粉であるペーストタイプとは別にジェルタイプもあります。)
http://www.lion-dent.com/dental/products/basic/checkup_k.htm
ジェル状歯磨き剤:コンビ「テテオ歯磨きサポート新習慣ジェル」
育児用品を多数手がけているコンビが考案・製作したジェル状歯磨き剤。赤ちゃんのお口の機能の発育を考えた「プライマリーオーラルケア」という考えを基に制作されました。配合成分にはフッ素だけでなく、虫歯の原因となる「酸」の発生を予防するとされるキシリトールも配合されています。 http://www.combi.co.jp/products/oral/teteo_gel/
液体歯磨き剤:サンスター「薬用G・U・M(ガム)デンタルリンスこどもC」
発泡剤が入っておらず、泡立ちが少ないのでお口の中が見やすくなるため磨きやすいのが最大のメリット。大人用と違って、アルコールも入って無いので刺激も無く使いやすいです。液体が歯と歯の間まで行き渡るため、虫歯になりやすい場所にも成分が作用してくれますよ。
jp.sunstar.com/products/brand/gum/gum_23.html
粉状歯磨き剤:ウィステリア製薬「BRIAN(ブリアン)」
現代では珍しい粉タイプの歯磨き剤です。主要成分として「善玉菌BLIS M18」を配合。殺菌剤、界面活性剤、発泡剤などの添加物不使用。お子さんからご老人まで幅広くお使いいただけます。粉は使いにくいイメージですが、こちらは水で練ったりすることもなく、そのまま歯ブラシに付けて使うことができます。また個包装なので1回量を誤って使いすぎることもありません。
http://kodomohamigaki.com/brian/yah/index.php?referer=noasp
歯磨き剤に類似したオーラルケアグッズのご紹介
清掃補助具として販売されているものの中には、歯磨きの補助をするものだけでなく、成分を歯に直接作用させるためのペーストなどもあります。これらは歯磨きした後に歯に塗布するため、歯磨き剤のように使ってしまうと成分が思うように作用しない場合もあります。使用法をよく確認して使いましょう。
GC(ジーシー):「MIペースト」
「カルシウム」や「リン」などのミネラル成分を補い再石灰化を促し、歯の表面の強化や歯質が弱っている部分を修復する効果があります。また、口内の中和や緩衝作用をおこなう「CPP-ACP(リカルデント)」を配合しており、酸性に傾いた口内環境を整える補助をおこないます。歯磨きした後に再度歯ブラシにペーストを乗せ、歯面全体に塗布します。5種類のフレーバーがあり、歯磨き剤が苦手なお子さんに素磨きした後の仕上げとしてご利用頂きたい製品です。
https://www.gcdental.co.jp/sys/data/item/417/
Oral Care(株式会社オーラルケア):「ホームジェル」
ジェル状の本品には、フッ素成分として「0.4%フッ化第一スズ」が970ppm配合されており、主成分である「リン酸カルシウム」と反応して歯質の強化と再石灰化を補助するものです。こちらも歯磨きを行った後、再度歯ブラシに適量の乗せ、歯面全体に塗布します。発泡しにくいため、歯磨き剤のように吐き出すこともなく操作性の良い性質です。6種類のフレーバーと可愛らしいパッケージで、お子さんの意欲UPに繋がりますよ。 https://www.oralcare.co.jp/product/post-27.html
まとめ
いかがですか?歯磨き剤って実はさまざまな役割ごとにたくさん種類があることがお解りいただけたでしょうか。
あくまでも歯磨き粉は補助具ですので、汚れは歯ブラシで落とせるため、必ず使わなくてはならないというわけではありません。 ただ、お口性質の変化や成長による変化、生活習慣に合わせて取り入れると、今よりももっと虫歯予防や歯周病予防などにつながるメリットも生まれます。
難しく考えず、「お子さんが楽しく歯磨きできる」ということが第一ですから、そのお手伝いになるのであればぜひ使ってみてくださいね。その上で使用開始時期やどんな製品が合うのか、いろいろ試して、お子さんそれぞれの特性に合わせて選んであげてくださいね。